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まちおしAWARD at 伊勢崎 佳作

【佳作】大橋 俊介さん

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1983年伊勢崎市生まれ。前橋高校、中央大学卒。伊勢崎市を中心に不動産業に従事。前橋市では移住の促進に注力し、不動産の面から移住者のサポートをしている。一方で、経営者の有志と(同)上州家守舎を設立し、まちづくりの事業活動にも取り組んでいる。趣味はアニメ、ゲーム、麻雀、吹奏楽。アトピー持ちのひげおじさん。2023年に(公社)伊勢崎青年会議所卒業、現在は伊勢崎商工会議所青年部に所属。

まち×ゆめ〜いせさき銘仙の伝統を未来へ紡ぐ〜

大橋 俊介

 十二月初頭、前橋で開催された群馬イノベーションアワード授賞式に彼女の姿があった。群馬出身の若手起業家としてトークセッションに登壇した彼女の名前は、村上采(むらかみ あや)。株式会社Ay(アイ)の若き社長だ。
 村上さんは伊勢崎出身の起業家。中学は市内の四ツ葉中央中等教育学校を受験し、学内のプログラムで姉妹都市のスプリングフィールド市を訪れた。早くから世界の広さを経験する一方で、中高一貫の環境に閉塞感を覚え、高校時代には再度の渡航に臨む。今度はミネソタ州に一年間。ここで、日本出身の自分も、アメリカではひとりのアジア人でしかないことに衝撃を受けた。
「誰と会話をしても、最初は日本人として見られないことに驚きました。」
自分の言葉で意思表示をしなければ、人種の殻を破れない。貧富の差も出自の違いも、自分で越えなければならない。翻って村上さんは、日本の奥ゆかしさを再認識し、日本人であることのアイデンティティ―も確立していった。
大学に入ると、海外への関心はさらに強まる。起業家支援を行うゼミに所属し、研修でコンゴを訪れると、ゼミの研修とは別に、コンゴの方々とともに事業を計画。現地のシングルマザーたちに、日本で販売するための衣服の縫製を依頼した。
「現地の友人に、『日本人は支援してくれるが、それもこの国にいる間だけ。いなくなったら何も残らない』と言われたことが衝撃でした。その場限りではなく、継続していくことが大切だと学びました。」
 コンゴで作った四十着の服を帰国して販売すると、一週間で完売。この成功体験が、村上さんの起業精神を確固たるものにした。コンゴの友人の言葉を胸に、ゼミの研修としてではなく単身で再度コンゴに渡り、縫製を発注。今回は八十着。これも、イベントやオンラインで完売した。二度の成功を経て、事業としての展望が見えてきたころ、コロナ禍に見舞われる。渡航は制限され、物流もストップ。リモートの体制が整う前で大学の授業もなく、家に一人、自分を見つめ直す時間となった。
 「描いていたものが崩れ去って自棄気味でしたが、両親に宥められて実家に戻ることにしました。途方に暮れていた時に、いせさき銘仙の存在を思い出したんです。」
 高校時代にアメリカに留学した際も、いせさき銘仙の着物を持参した。コンゴで服を作った際も、いせさき銘仙とアフリカンプリントを融合して縫製した。自分の転機には、いつもそばにいせさき銘仙があった。腐っていても仕方ない。今ここでできること。いせさき銘仙のことを徹底的にリサーチした。銘仙はそもそも普段着でありながら、伊勢崎のそれは他に類を見ない、華やかで独創的な図柄を持っている。現代でも通用する可愛さ、エレガントさがある。しかし、今ではその技術は失われてしまった。村上さんは、現存の銘仙着物をアップサイクルして新しい服に生まれ変わらせた。このとき、大学四年生。就活はせず、自分で起業することはもう心に決まっていた。
 富岡製糸場に代表するように、群馬は元来、絹産業が盛んだ。県内にはまだ縫製工場がたくさんある。村上さんは見本と事業計画を手に、単身工場に飛び込んでプレゼンし、見事に生産を引き受けてくれる企業を見つけたのだ。
「実績のない女子大生からの、少ロットの依頼をよく引き受けてくれたと思います。それまでやったことのない縫製だったそうで、それを考えても最初に行った工場で引き受けてもらえたのは、本当に幸運でした。」
 大学四年の六月、村上さんは会社を興す。第一弾として販売したパンツ十本はすぐに完売。クラウドファンディングでは、百万円の募集に対して二百万円を超える支援が集まった。県内や東京でポップアップストアにて定期的に販売するほか、オンラインでも好調に商品が売れていった。大学時代のつながりから、文化やファッションの専門誌で取り上げられると、それを機に全国区の大手新聞でも取り上げられた。一方で、いせさき銘仙の復興にも着手した。技術は失われても、デザインは残っている。現存するデザインをデジタルデータ化して、様々なものにプリントする開発を進めた。現在では、商品のパッケージやスーパー銭湯などの制服、ホテルのカーテンなど、様々な場所で活用されている。
「私がいつも心に刻んでいるのは、『選んだ道を正解にする』ということ。どんな道であれ、まずは自分で選ぶ。そして、たとえ失敗しても、正解になるまで挑戦し続けます。今はまだ実店舗を持っていないので、いずれは群馬にショールームも兼ねたお店を設けて、オーダーの受注もしたいですね。海外での経験が私の根底にあるので、次はいせさき銘仙を世界に展開するという道に挑みたいです。」
 村上さんの名前の采は、采配から取ってご両親が名付けたという。いせさき銘仙の未来を切り拓くため、村上さんはこれからもその采配を振る。

※コラムの著作権は、すべて執筆者に帰属しています。無断での転載、使用はご遠慮ください。


 

○本記事:まちおしAWARD at 伊勢崎

 

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