伊勢崎市内を中心に県内外のあちこちで絵本の読み聞かせボランティアをしていたり、「だるま文庫」の屋号でマルシェ系イベント等で自由に絵本を読める移動文庫としてスペースを提供しながら、古絵本の販売もしています。子どもたちに(もちろん大人にも)少しでも本に興味を持ってもらえたら、という思いで日々活動しています。
阿部 祐子
案外知られていないようですが、伊勢崎市は文科省のモデル地域になった十数年以上前から、「読書の街いせさき」と謳っているのです。
毎月11月には「図書館フェスティバル」が開催され、街中をはじめとした市内各所には本を自由に読め、持ち帰りもできる「まちかど図書館」も存在しています。夏休みに募集のかかる「家族ふれあい読書新聞」の展示発表を見ると、家族ぐるみで読書を楽しんでいる家庭が多いのもわかるし、コロナ禍で休眠状態になった各所での絵本の読み聞かせ活動も、他市より比較的早くに復活していたように思います。
マンガだって読書の一部に入れていいのであれば、昨秋に伊勢崎市出身の漫画家あらゐけいいち氏の作品「日常」と市がコラボしたイベント「伊勢崎×日常」の開催により全国からファンを集わせたことなどは、まさに「読書の街いせさき」のなせる業なのではないでしょうか?まああれはアニメのほうがメインだろうと言われてしまうかもしれませんが、漫画版を好む我が愚息は、このイベントに参加したいがために熊本から帰ってきていますからね。
間違いなく伊勢崎市は「読書の街いせさき」なのです。そして、このことをもっともっとアピールしていきたいのです。
世間では本離れ、活字離れといわれていますし、個人経営の書店のみならず大手の書店すら業務縮小や撤収の時代です。
それでも私事ではありますが、各所で読み聞かせボランティアをしたり、いせさき楽市をはじめとするイベント等で絵本を自由に読める移動文庫スペースを作ったりしていると、立ち寄ってくださる家族がとても多くて、確実に絵本を読む子どもたちの笑顔が見られます。特にコロナ後のイベントでは、ママやパパ、おじいちゃんやおばあちゃんがお子さんに読み聞かせをする姿が多くみられるようになりました。絵本を介してみんなが笑顔になれる。なんなら傍観している私まで笑顔になれる。
大人にいきなり本を読めと言っても、なかなか難しいとは思いますが、お子さんが絵本に触れることによって本を好きになっていき、その絵本を一緒に読むことによって大人も本を好きになっていく。絵本で育った子どもたちが大人になって我が子にまた絵本を読んでいく。「読書の街いせさき」を広めるためには、そんな連鎖が必要なんだと思います。
そのためにもまちなかでもっと本に関するイベントが増えていったらうれしいですよね。
昨年は有志による、図書館下の川辺で本と戯れるイベントを二回開催したのですが(二回目は雨天のため川辺では開催できないので、街中商店街の店舗をお借りしての開催になってしまいましたが)、外でも中でも想像以上の本好きなお客様がご来場くださいました。今年も第三回を開催するべく、動こうと声が上がりました。
前橋で開催されている「まえばしブックフェス」のような規模ではなくてもいいのです。こじんまりでもいいので、伊勢崎のどこかで本好きな人もそうでない人も、ふらっと立ち寄れるような本がらみのイベントが常に開催されていて、市民に限らずたくさんの人が集まってくれたら、堂々と「読書の街いせさき」といえると思います。
イベントだけではなく、「まちかど図書館」の蔵書がもっと潤ったり、市内のあちこちの公園や、屋内施設のホールや、商店街の店先などで椅子を設置して自由に読書出来たり、読み聞かせが突然始まったり、そんな本にあふれたまちになれたら最高ではないですか。
せっかくの「読書の街いせさき」という称号、市民に知られていないのではもったいなさすぎます。私がイベント時に目にする、絵本で笑顔になっている人たちの姿をもっと増やして、伊勢崎全体が幸せなまちになれることを願ってやみません。
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○本記事:まちおしAWARD at 伊勢崎
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