2月19日(木)伊勢崎市文化会館大会議室にて、社団法人伊勢崎青年会議所主催の2月公開例会が開催されました。今回の講演会は「子供の危険な携帯電話あそび」と題し、下田博次先生をお招きして開催されました。講演会に先立ち、主催者の主旨説明と下田先生のご経歴の紹介が行われました。
◆社団法人伊勢崎青年会議所 2009年度モラル共育向上委員会委員長 石原 毅氏の主旨説明
「近年、深刻な社会問題となっている子どもたちによる携帯電話の普及、利用は複雑かつ深刻化しています。早期からこの問題に取り組んでこられた下田博次先生をお招きし、インターネットの危険性についての知識を身につけ予防・解決実践のため、皆さんとご一緒に考えていきたいと思います。」
◆下田博次先生 ご経歴
平成20年3月で群馬大学社会情報学部大学院研究科教授を退官後、同大学特任教授に就任。NPO法人青少年メディア研究会を主宰、同研究ホームページ「ねちずん村」を運営。学校・自治体など全国各地で講演をされ、子供たちのインターネット利用の問題点を指摘し改善などを呼びかけています。詳しくはリンクからご覧下さい。
みなさん「携帯電話」と聞いて何を考えますか?
現在の子供(小・中・高生)の携帯電話利用、特にインターネットのできる携帯電話は単なる「携帯できる小さな電話」ではありません。下田先生は「携帯電話、パソコン、ゲーム機からできるインターネットは思春期の子供に好き勝手に使わせてはいけない最強のメディアである。」と語りました。
先生のお話によるとインターネットの世界の情報は子供の子育て、教育に良いとされる『ホワイトゾーン』、子供に知らせたくない『ブラックゾーン』、さらに良いか悪いか判断が難しい『グレーゾーン』が存在するそうです。
特に子ども達が「遊び」として利用しているプロフ、インターネットプリクラ、学校裏サイト、ゲーム、オンラインショップ、各種投稿サイトなどはこのグレーゾーンに含まれています。下田先生は特にこのグレーゾーンを長期にわたり調査分析されています。先生は、本講演で携帯電話を使ったそれらの「遊び」の危険な現状、ネット上での子ども達による誹謗中傷、ネットいじめ、個人情報の流失、ネット詐欺など子供が被害者になるトラブル、また子供たちが加害者となるトラブルなどの事例を1つ1つ丁寧に解説されました。
さらに先生は保護者世代が慣れ親しんできたテレビと現代のインターネットのメディアとの違いを上げ
「テレビは発信者の責任を問うことができる。しかしインターネットは発信者が誰かわからず、責任を問うことができない。子供たちが危険な情報に触れれば、危険な大人に接触してしまう。」と言及しました。
一方、インターネットを生み出した米国では以前からインターネットについて研究が行われ、法律も整備されているそうです。保護者の認知度も高く、子どもたちはインターネットの問題から守られています。それに比べ、なんの法律もない日本では国、企業、学校、保護者の認識が甘く、現状は危機的状況であると先生は指摘しました。
携帯電話が普及して約10年、子ども達の利用実態も急速に変化してきました。先生はペアレンタルコントロール『保護者や教師が子供のインターネット利用を管理・指導する営み、あるいはそのための能力』を説明しました。また、その必要性を知らない保護者に対し、学校や地域レベルで伝え広めていくことが重要であると述べました。
さらに、先生は今年1月30日に文部科学省が『学校への携帯電話持ち込み原則禁止』のルール策定を各都道府県の教育委員会に通達したことにも触れ、
「一定の意義は認めるが、米国に遅れること15年。とても遅いと思っている。この過酷なインターネット時代、日本の子ども達をどう育てるか?を今年は本当に議論するべき年になるでしょう。」と語っていました。
今後の問題対策として、今回のような講演会や「ねちずん村」の講習会から、市民のネットワークで子ども達を見守る活動が始まっていることを先生から教えていただきました。
【記者雑感】
質疑応答の時間に「現在、中学生の子供に携帯電話を持たせてはいないが、今後ずっと持たせないわけに行かず、高校生になったら与える必要性も出てくる気がする。その時、どのように見極めるべきですか?」といった内容の質問を先生に尋ねしました。これは保護者1人、1人の判断と言えますが、それがとても難しく、高校生になると活動の範囲も広がり、公衆電話も見かけない状況に保護者との連絡に必要では?と感じたからです。
それに対し、下田先生はインターネットを利用するのに必要な3つの力として、『情報の良し悪しを判断する判断力』・『誘惑に負けない自制力』・『間違ったことをしたときの責任能力』を説明し
「保護者や限られた人と電話・メールのできる必要最低限の機能さえあれば充分です。」とお答えいただきました。記者は講演前、先生の著書『学校裏サイト』も拝見したのですが、講演会を聴き、県内の子ども達や日本全国の子ども達が危険にさらされていると知り、驚きとショックを受けました。また、保護者としての認識の甘さを実感。安易な発想で子供との話し合いやアクセス制限等の対処をせずに携帯電話を与えることは間違いであると感じました。しかし、ショックを受け怖がるばかりではなく、きちんとした情報や知識を得て広めることが必要と感じました。
■参考文献■
講演会資料 「知った人から知らない人へ伝えよう 危ない子供ケータイ利用」
講演会資料 インターネット・携帯電話時代の子育て教育
−学校と家庭・地域の役割―
下田博次先生著書 『学校裏サイト』 (東洋経済新報社)
ネットについて話し合おう ねちずん村サイトはこちら
取材日:2009年2月19日 /アイマップfuru