中村吉成（なかむら　よしなり）さん 昭和46年8月29 日生まれ。

伊勢崎市出身 伊勢崎市在住。

今回、ご登場いただくのは有限会社ナカムラ精密の中村吉成さん。会社をお尋ねすると、社員さんが「今日は寒いですね！」「おかけになってお待ちください」と明るく声をかけてくれます。これほどまでに和やかであたたかな雰囲気を持つ会社の社長さんはどんな方なんでしょう？　お目にかかるのが楽しみです！

中村製作所　（有限会社ナカムラ精密が法人化される前の社名）が産声を上げたのは、中村さんが生まれる１年前。物ごころついたときには、すでに周囲から、将来は跡を継ぐよう言われていたそうです。「環境が環境だっただけに、いずれは父の会社に入るんだろうな、と思っていました」と中村さん。高校も、仕事に関係する電子機械科に進みました。

そんな中村さんですが、高校時代に一時、好きな絵の道に進めないかという考えがよぎったことがあったそうです。それでも、お父さまが裸一貫から築いた会社。従業員さんやお客様のことを考えると、ご自身が継ぐのが最良の道、と考えるに至ったそうです。

高校卒業と同時に同社に入社。他社で修業をすることなくお父さまの会社に入社したのは、会社が忙しかったことや、NC旋盤を新たに導入する話が重なったため。社会人となった中村さんは、働くというのはなんと大変なんだろう、と思ったそうです。それまでアルバイトの経験はあったものの、社員として働くのは心持が違うと感じたといいます。 また、導入したばかりのNC旋盤のプログラムは簡単に覚えられたそうですが、苦労したのは「手の感覚」。自らを「不器用」と称する中村さんは「手の感覚」をからだに覚え込ませるため、昼休みを早めに切りあげたり、夕方にタイムカードを押した後、残ったりすることも多かったそうです。

試作品の開発品や治工具の製作加工を手掛ける（有）ナカムラ精密さん。難しいのは、研究段階の試作品なため、品質に対する要求が高いことです。今では、三次元CAD/CAMを使った多軸加工オペレーションで様々な分野をサポート。目指すのは「かゆいところに手が届く会社」です。

3年前に代表取締役に就任した中村さんは、代表になってすぐにリーマンショックという有難くない洗礼をうけます。胃にポリープができるくらい神経をすり減らした中村さんを救ってくれたのは、従業員さんとお客様でした。仕事で懸命に応えてくれる従業員さんと、大変だと思うからと声をかけてくれるお客様。双方によって少しずつ会社は立ち直って行きました。

そのとき、中村さんは２つのことを強く感じます。ひとつは、親のありがたみ。「従業員さんもお客様も、父の信用あってこそ。父がこれだけきちんと基盤を作ってくれたから今がある、と心から感謝をした」と話します。 もうひとつは「従業員さんの大切さ」。大変なときこそ、大切な財産である従業員さんの暮らしを守りたい、と従業員さんは解雇せず、給料も下げない、と決めたのだといいます。その分、役員報酬をガクンを下げたため、税理士さんから「こんなに下げて…」と心配されたとか。それでも、従業員を守ることが大事、自分を始め役員の報酬は回復したときに戻せばよいと思ったそうです。「企業は人なり」。その言葉の本当の意味を「代表」という立場になって理解できるようになった」と話します。

現在、会長であるお父さまの時代から、お付き合いをしているのが地元金融機関。「会社が大変なときは資金繰りの相談に乗ってくれたり、ビジネスマッチングなどの情報を提案してくれたり、なくてはならない存在」と言います。

また、お父さまが社長だったころ、お世話になっていた取引先支店の支店長が、中村さんが社長に就任した年に再びその支店に戻ったことにも縁を感じたと言います。

これからの金融機関には「異業種の動向など含めてより濃い情報を発信してほしい」と話す中村さん。

ひとつひとつの質問に、言葉を選びながら丁寧に話してくれる誠実ぶりに触れ、穏やかで和やかな会社の雰囲気の秘密が分かったような気がしました。

有限会社　ナカムラ精密

◆住所：伊勢崎市長沼町643-11
◆TEL：0270-32-1404

取材日　平成24年1月