経営者の輪Vol.88 「中村石材店 中村貞三郎さん」伊勢崎市宮前町

Vol.88 中村石材店 中村貞三郎さんの巻

今回ご紹介するのは、伊勢崎市宮前町にある「中村石材店」の中村貞三郎さん。前回ご登場いただいた書上さんとは、伊勢崎商工会議所青年部のお仲間つながりです。

プロフィール

中村 貞三郎(なかむら さださぶろう)さん。 昭和47年1月9日 伊勢崎市生まれ。

伊勢崎市立殖蓮第二小学校、市立殖蓮中学校、伊勢崎工業高校機械科卒業 職業訓練指導員、国家資格一級石材施工技能士。中村さんは、明治26年開業という歴史と伝統ある「中村石材店」の4代目。伊勢崎佐波地区の石工組合の中で最も長い歴史があります。技を継承する職人として、看板を守っる経営者としてのお考えについて伺いました。

経営者向きじゃない? クオリティを追求する職人魂

取材にお邪魔すると、迎えてくださったのは、半纏(はんてん)姿でパソコンに向かう中村貞三郎さん。粋でいなせなイメージのある半纏と、デジタル機器の代表選手であるパソコンは、特異な組み合わせに感じます。  開口一番「経営者向きじゃないのかもしれないな」と中村さん。単純に、数字で表せる「利益」だけを追求するのならば、いろいろな方法があります。けれども中村さんのポリシーは「自分の納得したものじゃないとお客さまに出さない」。自分自身の手で真心込めて丁寧に、お客さまの「ありがとう」の声を励みに技に力を注ぎます。

中村さんが、利益より「心」と「技」を大切にするには、理由があります。中村石材店が手掛けるのは、墓石、石材加工・施工。100年以上残るものも少なくありません。墓石の施工で墓場に行くと、ひと目で分かるのだそうです。

「これはウチのひいじいさんの仕事だな、これは爺さんが手掛けたんだな。良い字、書いてるな、良い仕事してるなって」。

残るものだけに、決して手は抜けない。残るものだけに、仕事が看板になる。汚すことはできない。それが、下請けには出さず真心を込めて丁寧な仕事をしようと思った理由、「心」と「技」を大切にしている理由と言います。

パソコンができること、人の手でなければできないこと

パソコンのフォント(書体)で墓石の文字を作る業者が増えている中、中村石材店では今も「手書き文字」にこだわり、群馬県を代表する書家の先生に墓石の文字を書いてもらっています。

「パソコンの文字を使おうと試したこともあったんだよ。でも、出来なかった。人が筆で書いた文字の方が勢いがあり、チカラ強さがあるから。掘り上がったときの文字の浮き上がり方、そこに込もった思いが違うっていうのかな」腕組みしながら首をかしげる中村さん。半纏の着こなし方といい、気っ風の良さといい、不器用なほどの頑固さといい「職人中の職人」という言葉がぴったりです。

人の手でしかできない昔ながらの方法を継承しながら、「良し」としたものは取り入れるのが、中村流。そのひとつがパソコンの導入です。「今は、石屋もデジタルさ」とマウスを握る中村さん。

自らお客さまの元に伺って話しを聞き、イメージを膨らませて図面を起こします。昔ながらの角張ったフォルムあり、やさしくなだらかな曲線を使ったものあり、中村さんのデザインは多様です。「パソコンの図面なら、いろいろな角度からお客さんに見せられるからね。お客さんも分かりやすいと思うんだよ」

人の手を使ってする仕事も、パソコンを使ってする仕事も根底に流れる思いは同じ。「お客さまを大切にする」という心は変わらないのです。

国家資格にみんなでチャレンジ!若い力で活気ある石工業界を

石屋さんの仕事について10年。中村さんが感じたのは「腕が良いのと仕事が来るのは別」ということ。これからの時代に必要なのは、第三者からの実力評価、資格の取得ではないか? そう考えた中村さんは、佐波伊勢崎石工組合に属する若い職人さんたちと、国家資格にチャレンジ。見事「石材施工・石材加工作業」部門で金賞、「石材施工・石張り」部門で銀賞を獲得しました。それに加えて、職業訓練指導員の資格を得ることにも成功。一緒にチャレンジした仲間もそれぞれ合格し、組合内は一気に活気づきました。

石置き場で遊び、石の間に指を挟んでケガをした幼少期。石の上を飛び跳ねながら、父や祖父の仕事ぶりを当たり前のように目にした少年時代を経て、今、自ら石の世界で活躍する中村さんに現職の魅力を尋ねると「良い物を作って喜ばれて、お客さんから『ありがとう』って言ってもらえるんだよ。石屋は最高だね」4代に渡って伝えられてきた「中村石材店」の心意気と、経験から得た技とを融合させた中村スタイルは、これからもたくさんの「ありがとう」を生んでいくのでしょう。

「コツコツやるんさ。石屋だけにね」と中村さん。 「急激に伸びるものは、急激に落ちるリスクがある。でも、コツコツやって少しずつ伸びるものは、そうそう急には落ちないと思うんだ」。

ご自身を「経営者向きではない」とおっしゃった中村さんですが、どうしてどうして。チャレンジ精神と堅実性を兼ね備えた立派な経営者さん、とお見受けしました。

店舗情報

雲鳳 中村石材店

◆住所:伊勢崎市宮前町138
◆TEL:0270-25-1396
◆営業時間:8:00~18:00
◆定休日:日曜、祝日
◆業務内容:墓石、石材加工、施工

取材日 平成19年11月

応援します商売人!
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!

あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。

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