今回、お話を伺うのは、株式会社アルカディアグループ 代表取締役の青木正さん。旅行会社勤務からノウハウもなくいきなりの農業の世界に飛び込んだ青木さん。失敗続きだったと言うご苦労から、毎日出荷をするようになったいきさつや、やりがいなどを聞きました。
青木 正(あおき・ただし)さん 前橋市出身 前橋市在住
「小学校から高校までずっとサッカーをやっていたんです」と話す青木さん。小学校低学年の頃、友達に誘われ学校のサッカークラブに入りました。中学校に上がると、クラブチームに所属。選抜メンバーになった中毛地区のチームは、関東大会で優勝することもあったそう。しかし「良い指導者と仲間に囲まれてプレーするのが好きでしたが、サッカーはあまり好きではなかったかもしれない」と衝撃発言! 3年になるときにクラブチームを辞め、中学の部活へ移りました。当時、中学校の部活も強く、前橋選抜のメンバーに選出されます。ここで、声をかけてくれたのが、前橋東高校の監督。他校も受験したそうですが東高校へ進学しました。その一番の理由を真顔で「近さに魅力を感じて」。どれだけ面白いんですかーー! いくつものチームを経験した青木さんですが、高校の部活が「とにかく楽しかった」と振り返ります。部員は、総勢70〜80人という大所帯。先輩後輩関係なくみんなが仲良く、それが結束力の強さにつながりました。 東高では、1年生でブラジル遠征があり「初めての飛行機に心が踊った」と振り返ります。ほかにも国内の遠征でいろいろなところに行く面白さもあって「とにかく楽しかった」というサッカーですが、大学進学をしてまで続けようとは思わなかったそう。将来を考えたときに、心惹かれたのが旅行の世界でした。数々の遠征を通じて新しい場所に飛び込んでいくことにワクワク感を覚え、それを仕事にできたらと思うようになったのです。 こうして、ホテルや旅行について学べる専門学校への進学を考え始め、東日本ブライダル・ホテル・トラベル専門学校のトラベルコースに進学しました。「今思えば生活基盤を変えて都内の学校に通うという選択肢もあったかな」と思わなくはないそうですが、当時の青木さんにとって東京は非日常。暮らす場所ではないように感じていました。
専門学校の1年生の時に、シドニーにホームステイ。ホストファミリーは、3人の小さな子どもがいる家庭でした。日中は英語を学ぶために学校に通い、夕方になるとホストファミリー宅へ。帰宅後は、3人の子どもたちに「タダシの英語は英語じゃない」などとからかわれながら、宿題を教わることもあったそう。食べ物も合い、楽しい毎日だったそうです。 2年生になると添乗員のアルバイトを始めます。インターン先のJTBで誘われて、卒業後はJTBに就職。太田の支店で社会人の一歩を踏み出しました。 職種は営業。当時、同社には学校の修学旅行などを扱う教育旅行と会社の社員旅行や研修などを扱う法人旅行があり、青木さんは法人の担当になりました。エリア内の会社に電話をしたり、突然尋ねたりして研修旅行や社員旅行の案内をしますが、簡単に契約に結びつくものではありません。 3年目になると栃木県に転勤。この転勤が、青木さんの転機になりました。同支店は、JTBの中でも好成績を残し続けている支店。先輩や上司たちはオンオフがハッキリしていて、仕事に対しては厳しさを持っていました。そして、営業のアプローチも今までとは全く違うものだったそうです。「この時代は『考える』クセづけを徹底させられました」と青木さん。たとえば、新聞を手渡され「この中で新しい仕事を作ってみて」とか「いきなりギフトカードを100枚売るとなったら、どんな方法がある?」など、現実にはないことを課題として挙げられ、それを0から具体的な実行方法を考えるということをしていたそうです。数字に対してもとってもシビア。年の目標から各月、各週確実の目標を割り出し、それをどうクリアするか考えて、行動していきました。 「仕事は好きだった」と言う青木さん。厳しい中でも、仲間と充実した毎日を過ごしていましたが、上司たちをハードな働きぶりを改めて見た時に、自分の理想とする未来がかけ離れていることに気づきます。その時、青木さんの頭に「自分でやろう」という考えが浮かびました。 始めようと思ったのは農業。お父さまが農業に従事しており、土地があったことが大きな要因でしたが、あくまでも経営は別。自分で始めようと考えていました。しかし、農業の先輩であるお父さまは大反対。苦労を知っていただけに賛成しかねたのでしょう。それでも、青木さんの心は既に決まっていて会社を退職。栽培する野菜を決める前に、なんと2反4畝のビニールハウスを建ててしまうのです。
青木さんのお話を伺っていると、人に導かれている人生なのだなぁと改めて感じます。 ビニールハウスを作ってくれた方のお兄さまが、小松菜を栽培する農家さん。およそ半年間かけて収穫になるトマトやキュウリなどと違い、小松菜は1年中作ることができます。栄養満点でレシピも幅広く、子どもから大人まで多くの人に愛されています。 さまざまなリスクを考えた結果、当時農業初心者だった青木さんは、小松菜の栽培が適していると判断しました。こうしていよいよ栽培がスタート。忙しくなることを見越して、すでにパートさんを雇っていました。ところが「まるで育たなかった」と青木さん。ガクンガクンと階段を下るような形で、資金は減っていきました。それでも借金の返済、パートさんへの支払い、資材の購入などお金はいくらあっても足りません。当時青木さんは25歳。本業が終わると高校生に混ざって飲食店でアルバイトをする日々が始まりました。「夢を持って起業したのに」と何とも言えないやりきれない気持ちになったと話します。試行錯誤しながらようやく軌道に乗り始めたのは、起業から2年半後のことでした。 青木さんの小松菜の特徴は、有機肥料を中心に育てていること。そして、毎日出荷をするのが強みです。お客さんのもとに質の良い小松菜を安定的に育てるため、現在では8反6畝のビニールハウスを有するようになりました。 「以前は新たなお客さまの獲得に心を躍らせていた時期もありました」と青木さん。固定のお客さまが多くを占める今、最もやりがいを感じるのは、計画と実際の集荷の量がぴたりとあった時。逆に、天候の変化などで予想が外れることが悩みだと言います。 毎日出荷をしているため、まとまった休暇を取るのが難しいのですが、貴重な休みを利用して「家族で出かけたり仲間とゴルフに出かけたりすることが楽しみ」だそう。「今後は、プレイヤーとしてだけではなく、後進の育成にも力を入れていきたい」と展望を話してくれました。
株式会社アルカディアグループ ◆住所/前橋市今井町489-1 ◆TEL/090-4662-3528- ◆創業/2014年 ◆従業員数/11人 ◆業務内容/有機肥料を使ったコマツナ栽培
取材日 2025年2月
株式会社アルカディアグループのHPはこちら
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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