経営者の輪Vol.367 Y's Linoの代表 濱川(河本)典子さん
経営者の輪Vol.367 Y's Linoの代表 濱川(河本)典子さん
今回、お話を伺うのは、Y's Linoの代表 濱川(河本)典子さん。「濱川典子」の名前で、長年、司会業や講師業に従事。今年から、あえて旧姓の「河本」で新たな仕事を立ち上げた理由や、実現したい社会についてお話いただきました。
ウェディングの音響から広がった仕事
電話の向こうから聞こえる明るく澄んだ声。朗らかで、優しいお人柄が伝わってきます。お目にかかるのを楽しみにしながら、約束の場所へと向かいました。
座る位置やテーブルの場所など、さりげなく気づかってくれる濱川さん。会話を交わす中で、15年前、同じ地区に住んでいたことが判明! そして、な、な、なんと子ども同士が同じ学校の同級生。マンモス校だったため、お互いのことは知りませんでしたが、共通の友だちの名前も出てビックリ。そんなこんなで、ごく自然な流れで取材が始まりました。
転勤族だったご主人と結婚後「子どもが3歳になるまでは家庭で見て欲しい」と言うご主人の願いで専業主婦に。お子さんが小学校に入るタイミングで仕事をしようと面接に行きますが、うまくいかなかったのだそう。当時は、ご両親も離れたところに住んでいて、緊急時の預け先がなかったことに企業が難色を示したのです。そこで、ご主人がお休みだった土日に絞って探したところ、採用になったのがウェディング関係の音響の仕事でした。
ご主人の転勤に伴って、仕事はウェディングの司会へと移り、活躍の場も群馬から東京・神奈川・千葉など南関東にまで広がっていきました。
まぁるい目をくりくりさせながら表情豊かに話す姿がとっても印象的な濱川さん。お話にぐいぐい引き込まれますが、「話したくなる雰囲気」を作るのもとっても上手。取材の鉄則は「取材相手の話を聞く(自分の話は挟まない)」なのですが、それを破っている自分に気づきます(汗)。
誰もが心を許してしまうのは、濱川さんだからこその魅力です。何人かのLGBTQの人から、カミングアウトされたこともあったとか。今でこそ、少しずつ理解が深まりつつありますが、少し前、口をつぐまざるを得ない状況の中、彼ら、彼女らは濱川さんだから、心を開くことができたのでしょう。
話を聞いた濱川さんは、LGBTQの人だけでなく、人が人と関わること、「パートナー」を持つことの意義について考えるようになっていきました。
人生を揺るがす出来事が転機に
2020年、世界中を震撼させたコロナが猛威をふるい始めます。ウェディングも激減。これをきっかけに独立し、都内の事務所に籍を置くことになりました。ここはとても厳しく「忌み言葉、発声など学び直しのよいきっかけになりました」と話します。そして司会業のほか、ウェディングの専門学校の講師としてボイストレーニングや自己表現の講義を受け持つようになりました。
独立して間もないころ、辛く悲しいできごとが濱川さんを襲います。長兄が、会社での事故に巻き込まれ、46歳の若さで亡くなってしまうのです。
濱川さんはお兄さま2人がいる3人兄弟。特に濱川さんにとって長兄は、中学生の時に病に倒れたお父さま代わりでした。きょうだいは仲が良く、大人になってからもそれぞれの家族を連れて集まり、バーベキューをしたりゴルフに行ったりしていたそうです。
お兄さまは体格が良く、元気そのもの。別の世界に行くこととは、1番かけ離れたところにいるような印象だったそう。事故の数日前に電話でゴルフに誘われましたが「私は独立したばかりで忙しくて。『次に誘って』と言ってしまったことを今でも後悔しています」と唇をキュッと結んでうつむきます。
信じたくない現実から濱川さんは、人の命はいつどうなるかわからない。自分が本当にしたいことはなんだろうと考えるようになりました。
自分が好きなものは? と自問自答したとき、真っ先に浮かんだのが「人」。そして、その大好きな「人」と「人」をつなぎ、さらにその人たちに喜んでもらうような仕事をしたいと思うようになりました。こうして行きついたのが「結婚相談所」だったのです。
結婚相談所を単独で運営するのは難しく、たいていは団体に所属し、お見合いを組んだり婚活のサポートをしたりする仲人として自らの相談所を立ち上げます。濱川さんは、団体の説明会に足を運ぶようになりました。ところが、魅力を感じる団体は、仲人としての登録料も高かったのです。
生前、親代わりだったお兄さま。その奥さまもまた、濱川さんにとって心を許せる大切な存在でした。以前からよく話をしたり、一緒に外出をしたりする仲だったそう。悩んだ濱川さんは、お義姉さまに頼み、結婚相談所の説明会に一緒に行ってもらうことにしました。
説明を聞いて「のりちゃんに合っている、できそうだと思う」。いつもは物静かなお義姉さまが、こう言い切りました。さらに、その費用は、お義姉さまが応援してくれることに。お義姉さまは「これは私ではなく、私の夫であり、のりちゃんのお兄さんからの応援」と言ってくれたそう。
突然に旅立ってしまったお兄さまは、家族の「絆」と共に、濱川さんの未来へつながる道を切り拓くきっかけを残してくださったのです。
こうして立ち上げた結婚相談所の名前は「Y's Lino」。Yは、濱川さんの大切なお兄さま夫妻に共通するイニシャル。この後に、楽園と言われるハワイの言葉をつなげたいと思っていたそうです。そのとき、お義姉さまが提案してくれたのが「光る、輝く、結ぶ」などの臣を持つハワイ語の「Lino」。逆から読むと濱川さんのファーストネームの一部で、愛称でもある「Noli」になります。
「まだ見ぬ奇跡的な出会いが、光り輝く未来に繋がりますよう、そんな想いを込めました」と濱川さん。「Y's Lino」では、お兄さまたちとの絆を意識したいと旧姓の「河本」を名乗ることにしたのです。
人とつながる喜びを広く多くの人に
「結婚はゴールではない」、河本さんはそう思っています。スタートさせたのは結婚相談所ですが、大切に考えているのは「人とのつながり」。結婚という形にとらわれるのではなく、心を通わせ合うことのできるパートナーと出あうことが、心の安定や豊かな時間の確保、また心身の健康につながると考えています。
結婚相談所と言うとなんとなく敷居が高いような気がしますが、利用法は思いのほか簡単。登録をすると、全国に広がる約9万人の会員のデータを閲覧することができます。そこから気になる人を告げると、仲人と呼ばれる河本さんたちがセッティング。「ちょっと違うな」と思っても心配ご無用。断るのは勇気の要ることですが、お相手とのやりとりも仲人さんがしてくれるので、余計な気をつかうこともありません。無事、プロポーズに至ったらその時点で退会となるそう。
Y's Linoの強みは何といっても、河本さんがウェディング業界全般に明るいこと。必要とあれば、ヘアメイク、コーディネーターなど、さまざまなスペシャリストが、会員さんの魅力を余すことなく引き出します。そして、河本さんご自身の経験から、失うことの怖さも計り知れない心の痛みもよくご存知なこと。だからこそ自然なかたちで寄り添って、一緒に涙を流したり、喜びを分かち合ったりしてくれるのです。
大切にしているのは「相手の幸せを心から願うこと」とニッコリ。河本さんの前でなら、安心して本当の自分をさらけ出せそう。そして、このことが、飾らない素の自分にふさわしいパートナー探しにつながっていきます。
ミレニアル世代やミドルエイジに限らず、LGBTQや熟年層など、さまざまな人のつながりをつくりたいという河本さんの元から、笑顔の輪が広がっていきます。
企業情報
Y's Lino
◆住所/埼玉県深谷市上野台
◆TEL/070-9022-1459
◆営業時間/10:00~19:00
◆休日/無
◆開業/2024年2月
◆事業内容/出張型結婚相談所
取材日 2024年8月
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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