今回、お話を伺うのは、株式会社群馬トラベルエージェンシー 営業課長の杉本ゆかりさん。内気であまりしゃべらなかったという杉本さんが「よくしゃべる」という理由で、観光会社への就職を勧められたこと、何度でも窮地に立たされたお仕事でのできごと、充実のプライベートなどを伺いました。
杉本 ゆかり(すぎもと・ゆかり)さん 佐波郡玉村町出身 伊勢崎市在住
「小さい頃は内気でおとなしい子だったんです」。よく通る声で杉本さんがこう話し出すと、社内から一斉に上がる「えーーー!」という声。そして、向けられる驚きの視線。あぁ、うんうん、そういうことなんですね。初対面ですが、分かる気がします。 なんでも「気の合う仲間うちでは素になれても、自分から話しかけるタイプではなかった」とか。小学生のころは、仲良しの友だちの家に集まって、当時、大好きだった光GENGIのCDを聞いたり、映像を見たりするのが楽しみでした。 高校は、地元の玉村高校に進学。親友をはじめ、同じ中学から進んだ友達が多く「とにかく楽しい高校生活でした」と笑顔で話します。「おとなしくて内気」の殻を破って、今の杉本さんが顔を出し始めたのは、この頃。部活のテニス部では和気あいあいと楽しく練習に励み、クラスでは理不尽な先生の授業を全員でボイコットしたことも! 「翌日、教頭先生や担任から大目玉をくらい、1週間、掃除をさせられたことも良い思い出」と振り返ります。 この時の夢は、保育士。小さい頃、保育園で優しい保育士さんに囲まれたことや、家では年齢の離れたお姉さま2人に可愛がってもらった経験が影響したのでしょうか。小さな子どもを相手にする職業に憧れました。 高校3年生のころ、就職は完全に売り手市場。求人票は潤沢にあり、杉本さんも就職の道を選びます。面倒見の良い担任の「よくしゃべるから、バスガイドがいいんじゃないか?」というひと言で観光会社への就職を考えるようになりました。観光会社の求人票は6社もあり、その中から市内の大手観光会社を選び、就職しました。
高校卒業後、3月中旬から早くも就職先での研修が始まりました。業界トップといわれる講師を招いて、挨拶、国内の地方や地名の読み方、バス車内でのお茶の入れ方などを徹底的にレクチャー。ゴールデンウィーク後のデビューに備え、6人の同期と共に学んでいました。ところが、4月に入ってすぐのこと。先輩ガイドが急に乗車できなくなり、同期6人のうちの誰かが代役として出ることになったのです。研修担当の講師が「杉本さんならできる」と太鼓判を押したことで、研修が始まって2週間足らずでデビュー決定。「どこへ行ったのか、どんなことをしたのかさえ覚えていない」ほど、緊張のうちにどうにかやり遂げました。 2年目の時は、バス6〜7台を連ねていく大掛かりな旅行でベテランガイドに囲まれる中、社員だからという理由で杉本さんが、本来最もベテランガイドが乗車する1号車を担当。しかも、行先は高山〜白川郷。当時は高速も通っておらず、片道だけで7〜8時間もかかったそうです。見どころは添乗員が解説。何もないところになるとマイクを渡されるというハプニング?も。それでも「良いお客さまたちに恵まれ、帰り際『一生懸命やってくれてありがとう』とおっしゃってくださいました。この言葉が支えになりました」と話します。 バスの仕事は、行政、学校、幼稚園などと幅広い年齢の方と関わります。その中で何度も幼稚園のバス旅行を担当。歌を歌ったり、お話をしたり、ときには自分で「得意ではない」という絵を描いて紙芝居を作ったり、さまざまな飽きない工夫をしたそうです。ところが相手は、エネルギーの塊である未就学児。その上、いつもと違うお出かけにテンションはマックス。同じことを5分やれば飽きてしまいます。一方、先生方は、このときばかりは「ガイドさんにお任せ」とリラックスムード。はしゃいだり、喧嘩したり、泣いたりと大騒ぎの子どもたちを見ながら「保育士さんになっていたら、辞めていたに違いない」と思ったそうです。 このようなさまざまな経験をする中で「度胸がついた」と明るく笑います。 7年ほど勤めた後、別の観光会社へ。1年ほど勤めてフリーになりました。コースを見ると、企画者の意図が見えるようになり、自分でもコースを作りたいと考え始めました。そんな時ある人からやってみないかと誘われ、フリーでガイド、添乗員、営業、企画とマルチに活動をするようになったのです。18年間にわたってフリーで活躍。お客さまからダイレクトに寄せられる声や数多くの指名は、やりがいにつながりました。
明るく元気いっぱいの杉本さんですが、命に関わってもおかしくない大病を経験。その時に「好きなことをすること、見たい景色を見に現地に行くことが大切」と実感したそうです。 また、18年間、フリーで活躍するきっかけを与えてくれた恩人の死も影響。「生きてきた証を残したい」と考えるようになりました。 旅行は1年に何度も行く人もいますが、1回限りという人もいる。その方たちに向けて『本当に楽しかった』と思われるプランや、思い出に残る時間を提供したいーー。それが、杉本さんの仕事における「生きてきた証」と思うようになったのです。 6年前、株式会社群馬トラベルエージェンシーに入社。現在は、営業課長として、営業や添乗員など務めています。最近ではさまざまなものの値上がりにより、予算内で納得のいくものを作り上げるのが難しいのが悩み。限られているからこそ、アイデアと経験で勝負、とお客さまが喜びそうなプランを考え続けています。帰り際、お客さまから「楽しかった」という言葉ともう一つ、「杉本さんが1番楽しそうだったね」と言われることも多々あるそう。その様子が目に浮かびますね。 プライベートでも月に1回は必ず旅行に出かけるほどの旅行好き。この先も新潟、北海道、伊勢と予定が詰まっています。国内で特に好きなのは金沢と沖縄。金沢は、群馬にはない風景が広がっていることや、独特の御国言葉、人の温かさが心地よいといいます。 沖縄は、時間を忘れられること。大ファンのアーティスト、HYの出身地である東屋慶名は、美しい風景が大のお気に入りです。 今後チャレンジしてみたいことは? と尋ねると、小首をちょっとかしげた後に「ないなぁ。今が充実しているので」とニッコリ。その言葉に、杉本さんの生き方が凝縮されています。
株式会社群馬トラベルエージェンシー ◆住所/伊勢崎市今泉町1-1210-3 ◆TEL/0270--23-8555 ◆創業/1983年 ◆営業時間/10:00〜18:00 ◆休日/土、日、祝(応相談) ◆従業員数/5人 ◆業務内容/国内・海外旅行、JR券・航空券・観光バス・旅館ホテルの予約や手配、各種団体旅行・社員旅行・研修旅行・親睦旅行など、各種パッケージツアー
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
※ご注意:本記事は上記の日付をもとに作成しています。実際にお店等に行く方におかれましては、事前に電話等で確認してからお出かけ下さい。記事と情報が異なる場合、imapは一切責任を負いませんのでご了承下さい。(記事と情報が異なる場合もありますので ご了承下さい。)