経営者の輪Vol.346 株式会社YSKの専務取締役 吉田将之さん
経営者の輪Vol.346 株式会社YSKの専務取締役 吉田将之さん
今回、お話を伺うのは、株式会社YSKの専務取締役、吉田将之さん。16年前にはお父さまで、現在同社社長の吉田勝昭氏にお話を伺ったことがあります。親子で「経営者の輪」にご登場いただけるとは感慨深いものがあります! 将之さんにお父さまの跡を継ごうと思うようになった経緯や仕事にかける思いなどをおたずねしました。
努力しても報われないことがある、が…
小さい頃はわんぱく小僧。外で元気に遊び回るスポーツ大好きな少年でしたが、球技は苦手だったそう。そんな中でも続けていたのがテニスです。ところが、宮郷中学校に入学するとたちまちテニス部は定員に達し、入部することができませんでした。格闘技好きだったことから柔道部に仮入部。そこで、体が小さくても技で相手を倒すことができる柔道の魅力に取り付かれました。礼を重んじる「道」を経験することで、自分を高めることができるのでは?と言う思いもあり、正式入部しました。
当時の顧問は柔道未経験者だった分、先輩や仲間と共に本やDVDで技を研究。徐々に力をつけていくと、大会で勝ちたいと言う気持ちが高まりました。「1年時、個人戦でいきなり準優勝をして天狗になってしまった」と後悔を口にする吉田さん。その後、練習に身が入らないこともありましたが、3年生の最後の大会では「顧問に認めてもらいたい、いつも応援に来てくれる両親に活躍する姿を見せたい」と、団体戦のレギュラー入りを目指して再び懸命に練習に励み始めました。この気持ちはほかの部員たちにも伝染。普段は仲良しの仲間ですが、部活になると言葉も交わさないほどライバル心バチバチ。熾烈なレギュラー争いが繰り広げられました。
ですが「甘くはなかった」と吉田さん。団体のレギュラーの座を勝ち取ることはできませんでした。それでも、個人戦で力を発揮できるよう頑張ろうと気持ちを切り替え、入賞まであと一歩という成績を残すことができました。
ここで吉田さんと柔道の縁は終わった、はずでした。
ところが4年後、吉田さんの影響を受けた弟さんが小学生で柔道教室に通い始めると、指導者から「教えに来てほしい」と依頼を受けるのです。柔道に向かう心も大切にする指導者に感銘を受け、低学年には安全に楽しく柔道と付き合うことを、学年があがるにつれて技や礼儀などを伝えていきました。子どもたちはどんどん成長。特に弟さんは個人戦で優勝を果たしたのです。「弟が自分にできなかったことを成し遂げてくれたこと、子どもたちに柔道の魅力が伝わり、たくましくなっていく様子を間近で見られたことは何よりもうれしかった」と振り返ります。
努力は、別な形になって吉田さんをさらに成長させ、当時は考えもしなかった新たな夢を運んできてくれたのです。
チャレンジが自分を高める
昭和41年創業、歴史ある株式会社YSKを営む吉田家の長男として生まれた吉田さん。ところが、お父さまからも跡継ぎを促されたことは一度もありませんでした。それどころか、社長であるお父さまは常々「好きなことを思いっきりやれ」と吉田さんに話していたそう。「無限に広がる選択肢の決定権を与えてくれたことに心から感謝している」と話します。
ひいおばあちゃん子だった吉田さん。幼少期は、当時まだ会社で働いていたひいおばあさまを恋しさによく会社を尋ねていたそうです。その頃の吉田さんにとって会社は遊び場。台車に乗り物代わりにして工場内を動き回ったり、職人さんが作業する様子を間近で見つめていたり。「今考えれば相当邪魔だったはず」と苦笑しますが、社員は「まーちゃん」と可愛がってくれました。
当時、車の部品の製造がメインだった同社。吉田さんの目は次第にお父さまの仕事に向けられます。出来上がる部品を見ては価格や使われる場所などを尋ねるようになります。お父さまたちが作る部品がなければ、車は動かない、日本も動かない、と「つながり」を感じるようになると、同社の仕事自体に興味を抱くようになっていきました。
中学時代、既に家業を継ぐことを意識していた、と吉田さん。小さい頃からものづくりが好き、車やバイクなどの乗り物も好きと言うご自身の特性も考え合わせ、足利工業大学附属高等学校の機械科に進学しました。高校時代は、ものづくり好きを確認するために製造業でアルバイト。将来、株式会社YSKに入社することを考え、お父さまに「会社の将来をどう考えているのか」を再三聞いたそうです。しかし、お父さまは言葉を濁すばかり。もしかしたら吉田さんの選択を狭めたくなかったのかもしれませんね。
そこで、お母さまになら本心を話しているのでは?と、お母さまにお父さまの考えを尋ねていたそうです。その中で、実はお父さまは吉田さんが会社を継いでくれたらうれしい、と考えていることを知るようになります。「優しいけれど、怒ると怖い、仕事に厳しく自分には手の届かない存在だと思っていた父がそう考えてくれることがわかってうれしかった」と吉田さん。心からお父さまの元で働きたいと思うようになりました。
小さい頃から会社に出入りし、経営者と従業員の目線の違いを肌感覚で理解していた吉田さんですが、入社後は一従業員としてのスタートを希望。社長であるお父さまも同じ考えでした。配属になったのは同社では新たな事業であった切削事業部。右も左もわからない中、1日も早く仕事を覚えようと必死だったと言います。 2年後、課長として今までとは違う表面事業部へ異動。「2年間の努力が認められたようでうれしかった」と笑顔で話します。
ここでは新たに営業の仕事にも携わるように。今まで社内だけに受けていた意識が社外へと広がりました。営業をすることでお客さまとの「取り決め」が、後々の仕事に大きな影響を与えることを知りました。「営業を経験したことが自分にとっての転機」と吉田さん。仕事への向かい方や考えの幅を大きく広げることにつながっていくのです。
その後、塗装事業部へ。常に新しいことにチャレンジを続けています。「新しいことをするときは不安を覚える」と本音をポロリ。しかし、ご自身の経験からチャレンジしてすればするほど、自分の知識が広がってできることが増え、自分を高めることにつながるということを知っています。このことで、自分を奮い立たせることができると話します。
スムーズな親子経営のための選択
同じ仕事をするようになったことで、お父さまの偉大さを一層感じるようになったそう。そのひとつが事業転換です。かつての同社の主たる事業は、車の部品製造。ところが自動車業界は波が大きく、安定的な経営をするのは難しい面がありました。会社の将来を考え、15年ほど前に社長が大掛かりな事業転換を打ち出しました。それが現在主軸になっているブラスト加工です。ブラスト加工とは、粒子状の研磨剤を対象物に噴射して表面に凹凸をつける表面処理加工の方法。機械が届かないようなところも加工できるほか、表面の機能性を高めることができます。もちろん、対応できる業界も広がります。お父さまは社員を集めて理解を求めますが、当時は反対の声も大きかったそう。「結果的にはその決断が今の成長の源になっている」と吉田さん。今でも「あの時、社長の判断がなかったらどうなっていたか…」と社員の間で話されることが多いそうです。
今、同社は金属全般のショット・サンドブラスト加工を手掛ける専門企業として知られています。所有するブラスト設備数35台以上と関東トップクラスを誇り、多種多様の加工が可能。非鉄金属も相談できる体制を敷いています。
「先を見据えつつ、その都度判断をしていく柔軟さが今後求められるのかと思うと、身が引き締まります」と真剣な表情を見せます。
そんな吉田さんですが、親子経営で悩んだ時期もあったとか。会社では社長、家はお父さまですが、家でも仕事の話が出て、どうスイッチを切り替えれば良いのかわからなかったといいます。他人に話してもなかなか理解を得られず、苦しく思うこともありました。そんな時、力になってくれたのか、同じ環境、経営者の両親を持つ友人の存在でした。悩みを共有することでわかってもらえる安心感が生まれました。
23歳の時、吉田さんは思い切って自宅暮らしを卒業。アパートで暮らしを始めます。「いろいろなことを俯瞰的に見ることができるようになりました」とニッコリ。イキイキと仕事に励んでいます。
お父さまと同じく「車やバイクが好き」という吉田さん。建てたばかりのご新居では、リビングから眺めることのできるガレージで車やバイクいじりを楽しんでいます。スノーボードや登山なども大好き。自然から大きなエネルギーをもらって、元気をチャージしています。
金属全般の錆・塗装の剥離、溶剤塗装、精密切削加工のことでお悩みなら、そんな吉田さんのところに相談してみては⁉
企業情報
株式会社YSK
◆住所/伊勢崎市三室町4024-1
◆TEL/0270-63-6010
◆創業/1966年
◆営業時間/7:30~16:50
◆休日/土曜、日曜
◆従業員数/30人(パート含)
◆業務内容/金属全般のショット・サンドブラスト加工の専門企業、金属溶剤塗装・金属精密切削加工・ダイキャスト製品プレスバリ取り仕上げ加工など
車やバイク部品・アウトドア用品のレストア(塗装前下地処理等)など一般の方のご依頼にも対応可能
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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