経営者の輪Vol.344 佐波伊勢崎農業協同組合 いせさき営農センターの係長 常見昌宏さん
経営者の輪Vol.344 佐波伊勢崎農業協同組合 いせさき営農センターの係長 常見昌宏さん
今回、お話を伺うのは、佐波伊勢崎農業協同組合 いせさき営農センターの係長 常見昌宏さん。現在に至るまでや伊勢崎生まれの野菜の魅力、「緑のある方に惹かれる」常見さんが、スカイツリーのお膝元に住んでいる理由などを伺いました。
学ラン姿で大根踊り
近くの利根川で魚釣りをしたり、川遊びをしたりと、自然の中でのびのび育った常見昌宏さん。ご実家は代々続く農家で、物心ついた時はおじいさま、おばあさま、ご両親の4人で露地野菜をはじめさまざまな農産物を育てていたそうです。ご両親は、決まった休みがない分、お休みがとれると夏はキャンプや山、冬はスキーとアウトドア体験をさせてくれました。
伊勢崎四中~伊勢崎東高校時代は、陸上部に所属。一生懸命練習に取り組みますが、特に高校時代は身近にいる強い選手を見て、自分の限界のようなものを感じたそう。将来についてご両親は「天候に左右される農業を職業とするのは大変」と話してくれました。農業従事者にならなくても、農業に携わりたいと思った常見さんは、東京農業大学(以下、東農大)に進学します。大学では「陸上を続けようとは思わなかった」と話します。
そんなとき、誘われたのが応援団リーダー部。学ラン姿で野球や駅伝などで頑張る選手を応援するもので、創設は昭和6年という歴史ある部活動です。今度は、表舞台で活躍する人を支えようと入部しました。東農大の応援団といえば「大根踊り」の名で知られる応援(正式名称「青山ほとり」)があまりにも有名ですが、練習方法を知っていますか?
なんと2リットルのペットボトルの中に水を入れたものを大根に見立て、両手に1本ずつ持って踊るのだそう。実際の大根より重いうえ、持ちづらいので落としたり飛ばしたり。「それでも割れたりこぼれたりすることのないペットボトルは優秀な練習アイテムです」とにこやかに話します。
応援団といえば、丈の長い学ランに太いズボン。これも各大学によって違いがあるのだそうです。東農大は激しく動いてもYシャツがズボンから出ても周囲からは見えないよう上着の丈は長め、ズボンは踊りやすいよう太めというスタイル。専門の業者でオーダーした学ランは、応援のときだけでなく大学のキャンパスにいるときにも常に着用。先輩の姿を見かけると走り寄って挨拶、終わると素早く走り去るという伝統があったのだとか。
4年生になると最上級生として、羽織袴姿も正装の1つとして加わり、各種応援活動を行います。また学ランをタキシードクロスで新調するのだそう。硬派っぽくてカッコイイですね。この姿で野球や相撲などの応援に駆けつけていたそうです。心残りは、箱根駅伝の応援に行けなかったこと。常見さんが在籍してた4年間は、駅伝部が予選会を突破することができなかったのです。しかし、来年、東農大は10年ぶりに出場することが決まりました。卒業から20年以上が経った今でも、OBに応援場所が知らされます。現役応援団部もOBも選手と同じアツい思いを抱いて大手町へ。TVで常見さんの姿が見られるかもしれませんね。
農業ビジネスを支えたい
大学では国際食料情報学部生物企業情報学科に在籍し、アグリビジネスについて研究しました。4年間、東京都内で過ごし、都心よりも緑に惹かれる自分に気づいた常見さん。卒業後は、地元伊勢崎に本店を構える佐波伊勢崎農業協同組合に就職。新しい農業システムやビジネスモデルを生み出し、効率的なビジネス展開に関わりたいと、いう思いからでした。
最初に配属になったのが、今、籍を置くいせさき営農センターの野菜集送センター。農家さんが出荷した野菜が規格に合うか検査し、市場に送ります。この検査がいかに大切か、常見さんはのちに身をもって知ることになります。
気をつかうのは、豊作のとき。消費者のために少しでも安く買いたいという市場と、農家さんの暮らしを考えて少しでも高く売りたいという常見さんたちの心の中でつばぜり合いが、激しさを増すのです。
「円滑に進ませるためには普段の仕事ぶりが大事」と常見さん。市場の急な要望に誠心誠意応えることで信頼関係が生まれます。それが「ここぞ」というときを決定づける大きなカギとなるのだそうです。
その後、ライスセンターに異動。このときに農産物検査員の資格を取得します。この資格を取得することで、生産した米穀の品質の検査ができます。同組合には現在、16人の有資格者がいて、品質のチェックをしています。
その後、野菜を統括する園芸販売課へ。そのうち2年半は、全農群馬東京事務所へ駐在し、都内の大田市場に勤務。このときは、スーツ姿でバイヤーに商品の提案などをしていました。土地が平坦で天候に恵まれた伊勢崎は、さまざまな種類の野菜が栽培できます。しかも東京から100キロ圏内で、新鮮なうちに市場に届けることが可能。このような好条件を武器に、伊勢崎生まれの野菜を広めていきました。特になす・きゅうり・トマトの需要は高かったそうです。このとき、ポイントになるのが最初に配属になった集荷センターの仕事。しっかり検品することでバラつきのない商品が信頼につながり、さらに仕事の幅と奥行きを広げます。
その後、管内の直売所を統括する直販課に異動。JA佐波伊勢崎オリジナル商品として伊勢崎特産のニラやゴボウを使った餃子の開発に乗り出し、販売に関わりました。その後、現在のいせさき営農センターに異動。係長として同センターに着任しました。
伊勢崎産野菜のおいしさを地元に
入社直後配属になったいせさき営農センターに戻ってきた常見さん。「農家さんの数も出荷数も以前とは比べ物にならないほど減ったことに戸惑った」と言います。そんな農家さんの相談に乗るのも常見さんの大事なお仕事。「相談して良かった」と言われることが次の仕事の原動力になります。
さてさて、大学時代に「緑のある場所」を求め、群馬の良さを再認識して伊勢崎で就職をした常見さんですが、現在お住まいになっているのは東京都内。しかも、スカイツリーが徒歩圏内という場所なのだそうです。それはなぜっ⁉
ご結婚した学生時代の後輩さんのご実家が近かったから、だそうです。共働きの常見さんご夫妻にかわって、下町でお店を経営している奥様のご両親が子どもの面倒を引き受けてくれたのです。
都内とはいえ、普段は声を掛け合ったり、お正月になれば町内会が近くの公園でもちつきをして通りを歩く見知らぬ人にもふるまったり。下町らしいあたたかなふれあいは、常見さんの心をやさしく包みます。
こうして常見さんは、下町の人情に支えられながらスカイツリーのおひざ元から2時間以上かけて伊勢崎に通っています。
都内のご自宅近くには、おいしい飲食店が多く、家族で外食を楽しんでいますが「おいしいご飯屋さんでは伊勢崎も全然負けていませんよ」と常見さん。「特に仁風さんの海鮮丼は、味もボリュームも最高。しかも価格は安くて、都内ではありえない」と話します。
もちろん、伊勢崎の野菜のおいしさも格別。都内で喜ばれる伊勢崎生まれの野菜たちですが「もっと地元に広めて、飲食店に提案していきたい」と抱負を語ってくださいました。
企業情報
佐波伊勢崎農業協同組合 いせさき営農センター
◆住所/伊勢崎市柴町今井25
◆電話/0270-32-8686
◆設立/1993年
◆営業時間/8:30~15:15
◆事業内容/信用事業、共済事業、経済事業、指導事業、販売事業、資産管理事業、その他事業
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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