経営者の輪Vol.343 有限会社スワコーポレーションの代表取締役 諏訪康彦さん

経営者の輪Vol.343 有限会社スワコーポレーションの代表取締役 諏訪康彦さん

今回、お話を伺うのは、有限会社スワコーポレーションの代表取締役 諏訪康彦さん。教職に就くものの、お父さまが創立した同社に入社を決めた経緯、現在取りくんでいるアップサイクル事業、その第一弾として企画・製作した「すわりん」についてお尋ねしました。 

プロフィール

諏訪 康彦(すわ やすひこ)さん

伊勢崎市出身

伊勢崎市在住


いつの時代も先生に恵まれて

穏やかな笑顔で迎えてくれた諏訪康彦さん。

ご本人によると、小学生の頃は通知表に「落ち着きがない」と書かれていたのだとか。とっても意外な気がします。


その諏訪さんが4年生の時、お父さまがご自宅の隣に、ウレタンの加工をするスワコーポレーションを創立。このころの諏訪さんは、遅くまで仕事をしているご両親やおばあさまを見て「忙しくて大変そう」と思っていたのだそう。長期休みになるとお手伝いをします。ウレタンを箱に詰めたり、接着くっつけたりと遊び感覚。「楽しかった」と振り返りますが、自分が会社を継ぐとは思っていませんでした。


あずま北小学校時代は、児童の長所を見つけるのが上手な担任に恵まれたそう。諏訪さんは画力を褒められ、コンテストに出品。佳作になり、初めての賞状を手にしました。挑戦する喜びや学ぶ楽しさを覚えた諏訪さんは、勉強にも力が入るようになりました。


あずま中学校ではバレー部に入部。顧問は、絵に描いたような熱血漢で「先生に叱られたくない」という一心で懸命に練習をし、佐波郡の大会では新人戦、春中体連、夏の中体連と三冠に輝きました。


進学した伊勢崎東高校では、3年間、担任は同じ先生。英語を担当していた担任の先生が「自分は人間を学ぶために文学部に行った」と言ったことに感銘を受け、同じように文学部英米文学科へ進学し、教員を志します。


進学した大学でも、また素晴らしい教授との出会いがありました。忘れられないのが、教育哲学の講義。教授は、自らが手にした1枚の葉っぱを手放しました。くるくると回りながら床に落ちる葉っぱ。そしてこう問いかけたと言います。「葉っぱと皆さんと私の共通点は何か?」と。首をかしげる学生たち。「みんな遺伝子の中には、らせん状のDNAが組み込まれている。そして、今、葉っぱもらせんを描いて落ちている」。このことを聞いたとき、感動のあまり泣いてしまったのだとか。この話に心を揺さぶられる、諏訪さんの感受性がとっても素敵です。


小学生のときに佳作になった絵は、今でも部屋に飾ってあり、絵をほめてくれた小学校の先生の誕生日には、当時の同級生と一緒に花束を届けに行くのだそう。大学の教授には、研究論文を見せてもらいに大学まで足を運んでいたといいます。縁を点のままにしない諏訪さんのこの姿勢は、のちの事業でも生きることとなるのです。


大学4年の夏、教員採用試験を受験。残念ながら不合格でしたが、臨時職員に合格し、念願の小学校の教員として小学校に赴任しました。

教職を辞め、お父さまの会社へ

教員1年目、早速、2年生の担任になります。印象に残っているのは、初めての授業参観。ドキドキしている諏訪さんとは対照的に、ウキウキで余裕の子どもたち。輪読で指名をすると「まだママが来ていないから、来てから指してほしい」。板書をすれば「先生、いつもより字がきれい」と主導権を握られそうに。それでも何とかやりとげ、ホッとしたのもつかの間。その後に開かれる懇談会の準備をし忘れて真っ青に、ということもあったそうです。


2年目は小学4年生の担任に、3年目は中学校に移り、英語を担当していました。子どもたちの反応はおもしろく、保護者からは「諏訪先生で良かった」と言われ、教員という仕事にやりがいを感じていました。


そんな時、スワコーポレーションの取引先と話す機会がありました。当時、同社の事業は、ウレタンの加工。ところが、ウレタンの生産や加工は中国に流れていて、このままだと事業が先細りになってしまうと聞かされるのです。

このまま教員を続けるか、それとも会社を継いだ方がいいのか。悩む諏訪さんの元に一通の封書が届きます。「教員採用の一次試験合格」の知らせでした。「教員になった方がいい」と言うおばあさまやお母さまとは対照的に、無言を貫くお父さま。諏訪さん自身の心は揺れました。それでも、心の奥底で答えは出ていたのかもしれません。家業を継ぐことを決意。25歳の時でした。


まずは、修業の意味で取引先に入社。最初にしたのは埃をかぶった古い機械を、きれいに磨き、使える状態にすること。機械が動くようになると、ウレタンのカットを教わり始めました。「思いのほか、すんなりとできた」と振り返る諏訪さん。時々失敗をすることもありましたが、教育担当者はあたたかく見守ってくれ、どんどんできることが増えていきました。「このままもっと長く勤めたら?」を誘われますが、当時すでに結婚をしてお子さんにも恵まれていた諏訪さん。一刻も早く自社に入って仕事を覚えたいと、半年後、ご自分の手できれいになった機械を伴い、スワコーポレーションに正式に入社しました。


「ウチで仕事を始めてビックリしたことがあります」と諏訪さん。ご自身が携わる仕事の売り上げは月に20万円ほど。ここから材料費を引くと、利益はわずか数万円だったそう。お父さまや職人さんの仕事を手伝いますが、それでも家族を養うには十分とはいえなかったといいます。そこで近くの倉庫で、朝の4時からアルバイト、その後、自社の仕事に精を出す、そんな日々が4年間も続いたそうです。


群馬にはウレタン加工を生業とする会社が比較的多く、同社は新参者。スピード、丁寧さ、確実な仕事を強みに、目の前の仕事に取り組み続けました。その姿勢は少しずつお客さまの目に留まり、紹介で新しいお客さまが広がっていきました。


一方、仕事をする中で、今まで気づかなかったお父さまの一面を見ることもできたそう。「とにかく真面目。お客さまに対する姿勢には驚きました」と話します。普通の人なら気にならないような小雨でも、積み込み時にお父さまは商品に二重のカバーをかけるのです。これは商品に対する深い愛情とお客さまへの細やかな気遣いの表れ。「このような実直な姿勢に頭が下がりました」と話します。


それでも、毎日のようにぶつかっていたという諏訪さん親子。お互いが「こちらの方が良い」と譲らないことが多くありました。社長と従業員という役職の違いこそあったものの、お客さまに向かう「スワコーポレーション」のスタッフという立場は一緒。つまり、見つめる方向はいつでも同じだったのです。



 2023年3月。お父さまは会長となり、諏訪さんは社長に就任します。引継ぎ時、お父さまはみんなの前で「後継者に恵まれ、悔いはない」と挨拶。これを聞いて、一筋の涙が諏訪さんの頬をぬらしました。「いつも喧嘩ばかりだったのに、こんな風に思っていてくれたのか」、そう思うと後から後から涙がこぼれて止まりませんでした。


新商品「すわりん」開発、アップサイクル事業をスタート

今、スワコーポレーションは、新たな事業にチャレンジをしています。それがアップサイクル事業です。


ウレタン、とひと言で言っても、種類や特徴はさまざま。それでも、ワンボックスくらいの大きな塊で同社にやってくるところは同じです。それをお客さまが求めるようなカット、加工、組み立てなどをします。この時に、端の部分はどうしても無駄になってしまうのだとか。それをアップサイクル。健康指導者、理学療法士と共同で座るだけで姿勢がシャンとするクッション『すわりん』を開発しました。取材の間、すわりんをお借りしましたが、腰がしっかりと立つ感じ。背筋も自然にピンと伸び、気持ちが前向きになる気がします。楽に持ち運びできるので、仕事のときはオフィスに、移動のときは車の中に、と移し替えることができるのもうれしいですね! 自分へのご褒美に、家族、大切な人へのプレゼントに、会社の福利厚生として社員に。喜ばれること請け合いです。クラウドファンディングにも初挑戦。募集締め切りまであとわずか! ぜひ、みんなで応援しましょう!!


アップサイクル事業は、自社のためだけのものではありません。同じような思いを持っている会社や個人とつなげるハブになれればと考えています。

社長になって、さまざまな声がかかるようになった」という諏訪さん。その縁をつなぎ、広げていきたいと話します。


諏訪さんのプライベートでの楽しみは、インドカレーを作ること。以前、在籍していたインド人スタッフがふるまってくれた本場のカレーを食べてからすっかりはまってしまったのだそう。コツは玉ねぎをじっくりと炒めること。スパイスを混ぜ合わせる本格的なものです。うーん、おいしそうですね!しかし、ご家族からはあまり良い反応が得られないのだとか。


もう一つは「走ること」。ご自身もぐんまマラソンに出るランナーですが、観戦も大好き。特に駅伝は欠かさずテレビの前で応援します。特に注目しているのが、来年のお正月に開かれる箱根駅伝。母校の三冠、そして初の二連覇がかかっているので「今からドキドキ」と早くも緊張した面持ちで語ります。

縁をつなぐ、思いをつなぐ、そして最後にみんなの笑顔が弾けるーー。そんな駅伝の魅力も、諏訪さんを虜にするのかもしれません。


企業情報

有限会社 スワコーポレーション

 

◆住所/伊勢崎市国定町2丁目1992-4

◆電話/0270-62-1214

◆設立/1988年

◆営業時間/8:00~17:00

◆休日/土曜、日曜

◆従業員数/16人

◆事業内容/ウレタン加工、商品開発、組み立て加工、自社製品の企画・販売



 
取材日 2023年11月

応援します商売人!
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!

あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。

ご注意:本記事は上記の日付をもとに作成しています。実際にお店等に行く方におかれましては、事前に電話等で確認してからお出かけ下さい。記事と情報が異なる場合、imapは一切責任を負いませんのでご了承下さい。(記事と情報が異なる場合もありますので ご了承下さい。)


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