今回、お話を伺うのは、鳶 齋藤組の代表 齋藤 隼さん。大人になってもご自身を支え、人や家族をつなげる起点になっているサッカーのこと、仕事への思いなどをお話いただきました。
齋藤 隼(さいとう しゅん)さん 伊勢崎市出身 伊勢崎市在住
取材先である齋藤さんのご自宅を尋ねると、玄関先に大小さまざまなサッカーシューズがズラリ。聞けば、4人の息子さんのうち、未就学児の四男さんを除く3人はサッカー少年。齋藤さんご自身もプレイヤーであり、古巣である小学生のサッカーチーム・伊勢崎SFCのコーチでもあるのだそうです。 齋藤さんにとってサッカーは、人とのつながりを紡ぎ出し、人生に迷ったときに帰ってくる故郷のような存在。今ではお子さんとのコミュニケーションツールのひとつでもあります。そんなサッカーとの出合いは、小学校3年の時。所属していた伊勢崎SFCは三郷小、北小、北第二小の3校の児童が集まったチームだったため、学校以外に友達の輪が広がりました。 進学先の伊勢崎三中は、同フットボールクラブの仲間が多かったこともあって、チームワークは抜群。しかし、伊勢崎二中にはどうしても勝てなかったのだそうです。中学3年生の夏の中体連では、市大会を勝ち抜いた上位二校、伊勢崎二中と三中が県大会の出場権を得ました。部員たちの士気も高まり、午前中の練習が終わると自宅から持参したお弁当を食べて、午後は自主練習。ある日、齋藤さんを中心とする何人かが「気合を入れよう」と、丸坊主にして練習に行ったそうです。それを見た部員全員がこれまた自主的に丸坊主に。部員全員が団結して、1戦1戦勝ち進めていきました。巷では「県大会の決勝は伊勢崎決戦になる」とうわさされていたといいます。もちろん、齋藤さんたちもそのつもりでした。しかし、伊勢崎二中が準決勝でまさかの敗退。齋藤さんたち、伊勢崎三中は全く情報がなかった、ダークホース相手に決勝戦にのぞむことになりました。 「すごく上手だった」と相手チームを称える齋藤さん。なかなか自分のプレイをさせてもらえず、試合は0対0のままロスタイムへ。残り1分。「審判の誤審ともとれる判断」がきっかけとなって、コーナーキックを取ります。チームメイトが蹴ったボールが一直線にゴールに飛び込むと、ピッチに試合終了のホイッスルが響きました。劇的かつドラマチックな展開で関東大会への切符を手にしました。 感動の決勝戦翌日、今度は顧問まで丸坊主に。こうして指導者と部員、みんなで臨んだ関東大会でしたが、残念ながら1回戦で涙を飲みます。相手はその年、全国優勝を果たした埼玉県の三室中学校。準優勝は、神奈川の桐蔭学園でした。ちなみに全国大会でも、三室中学校と桐蔭学園が対戦。関東大会と同じ顔触れの決勝戦だったそうです。それだけ関東のレベルが高かったんですね! 「今思えば、ここでやり切った感を覚えてしまったのかも」と振り返る齋藤さん。 サッカーを続けたいと進学した伊勢崎工業高校では、友達との付き合いが楽しく、サッカーからは足が遠のいてしまったそうです。齋藤さんとサッカーをつなぐ糸は、途切れたように思えました。
齋藤さんの転機は、20歳。高校生のときから付き合っていた女性と結婚したことです。家庭を守るため、親戚が経営していた太田市の土木会社に就職。住み込みで技術を身につけていきました。 担当するのは、建物や道路の基礎となる部分。土木の仕事は、天候との戦いで大変なことも多いのですが、完成物の良し悪しを左右する「土台」を作っているというプライドが、齋藤さんを支えました。 休日は、地元に戻って家族と過ごしたり、友だちに誘われて入ったサッカーチームで汗を流したりして気分転換。一度は離れたと思っていたサッカーが再び齋藤さんの人生に関わり始めました。 勤め先である親戚宅のお子さまはお嬢さんばかりで、跡継ぎはいませんでした。従業員と会社の今後を考え、自分が会社を存続させるべきなのかと思ったこともあったそう。しかし、その考えは入社8年目、28歳で変わりました。お嬢さんの結婚相手が当時の勤め先を辞めて、会社にやってきたのです。会社を辞めてまで身を注ごうとする娘婿の覚悟を受け止めた齋藤さんは、会社を離れて独立することを考え始めました。「30歳で独り立ちする」と周りにも伝え「30歳までの2年間で知っていることは全部教える」と娘婿に同社で学んだことのすべてを伝え始めました。 一方で、受注金額の詳細を気にするようになったり、伝票を見て「自分だったら、いくらで受けるか」と考えるようになったり。独立に向けて、心の準備は進み始めました。 こうして30歳を迎えた4月で退職。銀行から1250万円を借りて独り立ちを果たしました。
「独立の際、不安はなかった」とにこやかにほほ笑む齋藤さん。先輩やお客さまからが応援してくれ、今までに仕事がなくて困ったことは一度もないそうです。 秘訣を尋ねると「何でも受けること」と即答。「ドブさらいからビル建設まで。個人や社会の役に立つことができて、喜んでもらえることなら引き受けます」と話します。それでも、どうしても仕事が立て込んでしまうことも。そんなときは現状を素直に話し、着手できる予定を調整するのだといいます。 仕事をするうえで大切にしているのは、相手をリスペクトする気持ちを抱いて、誠心誠意、尽くすこと。そんな齋藤さんたちの取り組み方を見て、お客さまも齋藤さんたちをリスペクト。「ありがとう!」と喜んでくださることで、プラスのスパイラルが生まれます。 やりがいは、携わった仕事が目に見えるカタチになること。「『この現場を手掛けたんだよ』と言うと、子どもたちが思いのほか喜んでくれるんですよ」とニッコリ。取引先から「さすが、いい基礎を打つね」と技術を認めてもらえるのも大きな喜びです。 それだけに社員には「間違ったことは絶対にしないよう」と常に話しているのだそうです。それが必ず自分に返ってくること、自分の自信をつくること、お客さまに喜んでいただくこと、次につながることを齋藤さん自身が体感しているから伝えられるのです。 「平日は外仕事、土日はサッカー、一年中、屋外にいるのでご覧のとおり真っ黒です」と白い歯を輝かせる齋藤さん。「夜は白い服を着るか、(歯を見せて)笑っていないとどこにいるかわからない」と仲間から言われるのだとか。 仲良し家族と気の合う仲間に囲まれて、今日もおてんとうさまの元、齋藤さんは元気に動き回っています。
鳶 齋藤組 ◆住所/伊勢崎市三和町2850−11 ◆電話/0270-61-8516 ◆創業/2014年 ◆営業/8:00〜17:00 ◆休日/日曜 ◆事業内容/鳶土工、住宅基礎、コンクリート工事全般
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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