今回、お話を伺うのは、石坂電器株式会社の生産部開発技術課 課長の北川敬三さん。小さくて華奢な北川さんが172cm・105kgの立派な身体に育つ背景となったアメリカンフットボールのこと、人生を変えた海外旅行と就職先、現在のお仕事などについておたずねしました。
北川 敬三(きたがわ けいぞう)さん 大阪府吹田市出身 伊勢崎市在住
電話口から聞こえる独特のイントネーション。聞けば、北川さんは大阪の吹田市のご出身。1970年に大阪万博が開かれ、そのシンボルとしてあまりにも有名な「太陽の塔」があることでも知られているこの地で、3人兄弟の次男として生まれました。 幼いころの北川さんは、ひょうきんでお調子者。2歳年上のお兄さまと仲が良く、よく一緒に遊んでいたといいます。遊びのフィールドは、もっぱら屋外。昆虫や魚を探したり、カニを捕まえたり。「たまに家にいても障子に穴を開けて遊んだりして。おかんは大変やったと思います」と人懐こい笑顔で話します。 元気いっぱいのやんちゃな姿が目に浮かびますが、クラシック好きのお父さまの影響で「小さいころからピアノやバイオリンを習っていた」というハイソな一面も。今でも、ピアノを嗜むのだそうです。聞いてみたい♪ 友達の中ではまとめ役。学級委員を務め、将来は社長になりたいと思っていました。大きな夢を抱く北川さんですが、高校入学前は身長150cmで体重は50kg台。華奢な体型がコンプレックスでした。高校では、がっしりとした体格への憧れもあり、ほとんどが初心者というアメリカンフットボール部に入部します。この時代に身体づくりで栄養学に興味を持ち、1日5回の食事を取り、週4回の筋トレを重ねるうちに身体は激変。大学卒業時には身長は172cm、体重は105kgにまでなりました。 アメリカンフットボールは覚えることがたくさんあるスポーツ。ルールは選手でもすべて把握するのが難しいほど多く、戦略は100以上、さらに相手のフォーメーションなど、頭と体の両方をフルに動かし続けてのぞみました。 進学した大学でも、アメリカンフットボール部に所属します。スポーツ推薦で入部する仲間は部活に全集中。しかし、北川さんは実験が多く、研究室に滞在する時間の長い理系の学部だったこともあり「学業との両立がとても大変だった」と振り返ります。 明日6時からランニング等の体作り。8時過ぎには講義が始まり、夜7時くらいまで研究室に。その後、アメフトの練習、夜はアルバイト、と目の回るような忙しい毎日でした。 また、部活ではレギュラー試合にも出て活躍する傍ら、トレーニングリーダーも務め、100人を超える部員たちの筋トレメニューを管理したり、体づくりのためにトレーナーやマネージャーとともに補食を考えたり。その成果が出て「関西学生アメリカンフットボールリーグで3位になったときはうれしかった」と声を弾ませます。 大学時代も後半に差し掛かると、大学院進学のための勉強も加わります。「おかげで、同時並行でいくつものタスクをこなせるようになりました」とニッコリ。この経験は、今の仕事でも生きているそうです。 大学院では、人間工学を専攻。自動車やバイクに興味のあった北川さんは、自動車のハンドルに伝わる力や姿勢によって操舵意図を予測する研究を進め、自動車の血管や神経になるワイヤーハーネスを製造・販売する住友電装に就職しました。
転機を尋ねると「就職前に兄と旅行したことと、住友電装への就職」と即答。 ダイビングの免許を取得するために、就職前に旅慣れたお兄さまとフィリピンへ。それまで北川さんの海外旅行といえば、多くの人がしているように予め行き先を決め、ホテルを予約して観光名所や食事を楽しむもの。ところが、バックパッカーのような旅をするお兄さまは違いました。持っていく荷物は必要最小限。行く先で交渉して宿に泊まります。その面白さやワクワクやドキドキを知り、海外での暮らしに興味を持つようになりました。 就職した住友電装は、海外にもアメリカ、アジア、オセアニア、ヨーロッパ、アフリカと世界各地に拠点を持っています。海外に行くチャンスがある、と北川さんの心は踊りました。 入社して間もなく出会ったのが、現在の奥様でした。その奥様の出身が群馬県。石坂電器株式会社の社長のお嬢さんだったのです。ご長女だったこともあり「いずれは群馬に帰る。お付き合いする人も、群馬に来てくれる人」と話していたそうです。この条件を知ったうえでお付き合いを始めた北川さんは、時折、石坂電器株式会社の作業を手伝ったり、ときにはアドバイスをしたりして少しずつ関わりを持ち始めました。 就職先の住友電装では、生産技術を担当。工場の新規ラインの構想〜立ち上げ、量産後の改善を繰り返し、稼働が安定するまで携わる、という生産性の向上を左右する重要な役目です。ここでは技術や知識だけでなく、生産ラインに携わるスタッフや関係する各部門など現場と関わるコミュニケーション力も求められます。北川さんは、持ち前の明るさと人の懐にスッと入れる親しみやすさで、スタッフの意見を反映させて現場の改善を進め、成果を上げていきました。 実力を認められ、憧れの海外勤務に。フィリピン、インドネシア、メキシコなどで工場の立ち上げに携わりました。印象深いのは、最も長く1年に渡って滞在していたメキシコです。当時、住んでいた町、トレオンは危険な街ランキングでベストテンに入るほど。殺人や誘拐などがあるほど治安は悪かったそう。そんな中、仲良くなった現地の友だちが、外出する際は付き添ってくれ、北川さんを守ってくれました。このときの友だちとは今も交流が続いているそうです。 ちなみに、日本でもよく見かけるコカ・コーラ。世界各地で味が違うことをご存知でしたか? 北川さんによると、メキシコのコカ・コーラが「他に類を見ないほど美味しい」のだそうです。甘味料に、メキシコの主要な農産物であるサトウキビが使われているため、まろやかで自然な味わい。炭酸は弱めですが、味の濃いメキシコのお料理にとっても合うのだとか。最近では、メキシコを旅行したYEGの仲間にメキシカン・コークを買ってきてもらい、家で手作りしたタコスと共にタコスパーティーを楽しんだといいます。 話は住友電装時代に戻ります。結婚した北川さんご夫妻がメキシコ駐在中、お子さんが誕生。海外赴任を終えて戻った大阪で、2人目のお子さんに恵まれました。このとき、世の中にも変化が。新型コロナウイルス感染症のまん延です。会社はテレワークとなったため家族で伊勢崎に来て仕事をしていたそうです。 そんな中、再び海外赴任の話が持ち上がります。当時、奥様は3人目のお子さんの出産を控えていました。さすがに 奥様と子ども3人を置いていくことはできない、かと言って産後の奥様と生まれて間もない赤ちゃんを連れていくのは身体に負担がかかりすぎる…。悩んだ末「良いタイミング」と退職し、石坂電器株式会社への入社を決めました。
昨年6月、石坂電器株式会社に正式に入社。同社は、コイル巻線治具の製作から始まり、さまざまな技術で自動車や産業機械分野を支える会社です。 「本当は現場の作業者から経験したかった」という北川さんですが、入社早々、生産部開発技術課の課長に就任します。北川さんの仕事は、自社の技術を活用して、お客さまの求める製品を提案する仕事。これまでの図面通りのモノを製造する図面受託生産に変わり提案型の開発をする事で自社の技術も向上させる事を目的とした部署です。 単に開発と文字にするとシンプルですが、簡単なものではありません。図面や相談を受け取るときにお客さまのご要望を詳しくヒアリング。それを持ち帰り、資材手配、加工、組立、場合によっては現場での生産調整までを担当します。お客さまのご要望を鵜呑みにせず、新たな提案をしたり、試作品をつくったりすることもあります。 直近は、新しいクライアント獲得のために、展示会に参加したり、webで情報を発信したりする広告活動に、そこからつなげる営業活動と、さまざまな分野の仕事を引き受けています。「一度にたくさんのタスクに対応するのは、アメフトでの経験が生きている」とニッコリ。たくさんの業務をスムーズに進めるのに欠かせないのが、スタッフとのコミュニケーションです。 明るく親しみやすい性格、直接関係ない会議にも積極的に参加するという「自分ごと」としてとらえる姿勢で、周りから「早かったねー」と驚かれるほど、あっという間に馴染んでいった北川さん。ご本人は「会議での発言に耳を傾けてくれ、会社やスタッフが受け入れてくれた」と微笑みます。 北川さんが社内で心がけているのは、快適な職場環境の実現。社員の声に耳を傾けたり、会議を効率的に短めに済ませたり、自分が会社員だったからこそわかる改善点を取り入れ、より良い環境作りを進めています。北川さんならではの関西弁は、相手を傷つけず、しかも明確に伝えるのに役立っています。 営業では、近江商人の経営哲学のひとつである「三方よし」。売り手と買い手に良いだけでなく、社会に貢献できるwin・win・winの関係構築に努めています。 そして、どの場面でも「できない」と言わないこと。できない言い訳を並べるのではなく、どうしたらできるか? を考えるようにしているそうです。 3カ月前からは 伊勢崎青年会議所青年部にも所属しています。ここにも積極的に参加し、オブザーバーとして関東大会にも出席。その時の様子を伊勢崎YEGの各委員会長たちが集まる席で発表をするなど、入会して間もない人とは思えない活躍をしています。 仕事にYEGにと忙しい北川さん。息抜きは、帰宅後、石坂会長と交わす一献。お子さまが寝静まった後、奥様と「飲みながら語ることも楽しみ」とほほを緩めます。 これからは、趣味というにはあまりにも本格的な奥様の腕を生かし「新たな事業も展開していきたい」と語ります。楽しみの輪は、ますます広がりそうです。
石坂電器株式会社 ◆住所/伊勢崎市波志江町1777 ◆電話/0270-24-2983 ◆創業/1964年 ◆従業員数/138人 ◆営業/8:00〜17:00 ◆休日/土曜、日曜 ◆事業内容/各種コイル巻線、自動車電装品組立、樹脂モールド加工、鉄・銅・アルミパイプ加工、各種溶接、特殊試作品
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
※ご注意:本記事は上記の日付をもとに作成しています。実際にお店等に行く方におかれましては、事前に電話等で確認してからお出かけ下さい。記事と情報が異なる場合、imapは一切責任を負いませんのでご了承下さい。(記事と情報が異なる場合もありますので ご了承下さい。)