今回、お話を伺うのは、佐波伊勢崎農業協同組合の新井優一さん。小学生〜高校生まで熱中していたラグビーのお話、就職後の生産者との関わり、新しいチャレンジなどについてお尋ねしました。
新井 優一(あらい ゆういち)さん 伊勢崎市出身 伊勢崎市在住
伊勢崎で生まれた新井さん。お父さまの仕事ですぐに県外へ移り、いろいろな場所を経て再び伊勢崎に戻ってきたのは、小学校の低学年の頃でした。短期間で新しい環境を次々と経験したことが幸いし「人見知りをしない子どもになりました」と微笑みます。 伊勢崎に戻って新しく始めたのがラグビー。おじさまが伊勢崎ラグビースクールのコーチを務めていた関係でチームに入りました。「学外の友達もできて楽しかった」と嬉々として話します。全速力で走る選手同士がぶつかりあうラグビー。年齢が上がるにつれ、迫力も増します。中学生になると、怪我をして大きな手術も経験。仲間が走り回る姿を眺める日が続きました。 手術がうまくいき、進学した伊勢崎東高校でラグビー部に入部しました。当時体重が130キロあった新井さんは、スクラム要員。ぶつかり合い、押し合って、ボールを奪う重要な役割です。伊勢崎ラグビースクール出身の先輩や仲間も多く、インターハイ予選や総体では準決勝まで進んでいたそう。ところが、私立の壁は破るのは容易ではなく、ベスト4で涙を飲んでいたそうです。 学校の授業では好きだった地理を深く学びたいと、駒澤大学文学部の地理学科に進学。フィールドワークの多いゼミで、日本各地にある珍しい地形や地層がある場所を見て回ったそうです。教授からは大学院に進むことも勧められ、そこから国土地理院へ進む道もありましたが、考え抜いた末に就職を選択。都内で就職活動を始めました。 4年生の春が過ぎた頃、必修科目はゼミだけとなっていた新井さんは、頻繁に伊勢崎に帰ってくるようになりました。そこで、中学高校の友人と再び触れ合うようになり、地元の良さを実感。急遽、群馬県内で就職活動を始め、佐波伊勢崎農業協同組合に入職しました。
所属したのは野菜集送センター(現営農センター)。生産者が納める野菜を検査したり、仕分けしたり、それを市場に盛り込む値段を決めたりする仕事です。 「入職当初は、生産者の名前と生産している品目を覚えなければならず、気が遠くなる思いでした」と振り返る新井さん。当時、担当していた境町には400人近くの生産者がいて、所有している畑や家の場所も頭に入れなければなりません。 人見知りをしない新井さんは、現地に足を運び、よく赴いては生産者の話を聞いていたそう。「初めて見聞きすることばかりで楽しかった」と言います。話の中で生産者の考えや人柄を知るうちに、自然に多くの情報が頭に入っていきました。新井さんのコミュニケーション力が、早速仕事で役立ったのです。 値段を決めるのもまた、難しいお仕事です。売る側としては少しでも高く、逆に買う側としては少しでも安く買いたい。相反する願いの調整役です。新井さんが心掛けていたのは、目の前の1日1日ではなく、大きな流れの中で生産量を見て交渉すること。生産者さんのことを考えていきついた結論でした。 また害虫や病気で野菜の生産量が下がってしまったり、暑さで発芽をしなかったりというトラブルが発生したときは、他の部署と連携して指導に当たります。生産者が、野菜を元気に育て、消費者に喜んでもらい、その結果として生産者が安定した暮らしを送れるよう考えていたそうです。 4年後、本店に移動。野菜を統括する園芸販売課に配属になります。メインのお仕事は、販路の拡大。市場だけではなく、カット野菜や青果物の業者、量販店などに向けて営業活動に力を入れました。ここでも相手の話をよく聞き、自然と相手の懐に入っていける新井さんの力が発揮されます。営業先が欲しいと思っているものや興味を示しているものなどを聞き出し、JA佐波伊勢崎でできることとマッチングします。 こんなこともありました。ブロッコリーとケールを掛け合わせたアレッタを作り始めた若手生産者がいました。当時、今ほど知名度が高くなかったアレッタ。なかなか手に取ってもらう機会が少なく、苦戦を強いられました。そこで、栄養価が高く、簡単に調理ができ、しかもおいしいというアレッタの魅力をPRするためのリーフレットを制作。拡大に大きく貢献しました。新しい野菜を料理したり食べたりすることは、消費者にとって大きな楽しみでもあります。しかも栄養価が高いならなおさら! 生産者や新井さんたちの努力が、私たちに楽しく健康的な暮らしを運んでくれます。
「一般の人が思っているよりも、生産者の数は減っている」と深刻な状況を語る新井さん。そんな中でも伊勢崎エリアは、比較的後継者が多いのだそうです。新規就農者も少しですが増加傾向に。県外から移住される人もいるそうです。 「農業に興味を持つ人はいます。それでも新規就農者が爆発的に増えない大きな原因は、初期投資がかかることだと思います」と新井さん。トラクター、種、肥料、資材という物理的なものに加え、一朝一夕では身につかない技術。思いのほかハードルが高いと感じる人が多いそうです。 それを総合的にサポートできるのが、農業協同組合です。共済、指導、販売、資産管理など、さまざまな方面から生産者を応援しています。 「作って終わり」ではないのが生産者。そのあと、収穫した農作物の仕分けや袋詰めなどの仕事が残っています。そこで、伊勢崎波農業協同組合では、共同選果場を開設。収穫したままの状態で持って行けば、選別も袋詰めも選果場のスタッフにお任せできるようになりました。その分、生産者の負担が減り、生まれた時間で農作物の管理をしたり、勉強に力を入れたりと、生産者でしかできないことに注力できるというわけです。 最近では企業が農業に参入するケースが増えてきました。資金力はあるけれども、まだノウハウが乏しい企業と、逆にノウハウ、技術、場所まであるものの、資金力に不安がある生産者。お互いに協力し合うことで、佐波伊勢崎地区の農業が盛り上がっていくのでは、と新井さんは期待を寄せます。 最近ではトマト、ミニトマトの生産若い人が増えていて、評判も上々。「調味料を作る会社などとコラボして、地元で地元の野菜をいただける取り組みを増やしていきたい」と前向きです。 「仕事もプライベートも満足している」と幸せそうな笑顔を見せる新井さん。仕事を離れると伊勢崎商工会議所青年部の活動に参加したり、ゴルフに行ったり、ラグビーを始めたお子さまの様子を見に行ったり。充実したプライベートが、新井さんのパフォーマンスをより高めています。
佐波伊勢崎農業協同組合 ◆住所/伊勢崎市連取町3096-1 ◆電話/0270-20-1220 ◆設立/1993年 ◆営業時間/8:30〜15:15 ◆事業内容/信用事業、共済事業、経済事業、指導事業、販売事業、資産管理事業、その他事業
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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