今回、お話を伺うのは、あかぎ信用組合豊受支店で支店長代理を務める井上拓郎さん。同期の男性職員の中で最も遅い渉外デビューだった井上さんが支店長代理に至るまで、仕事をするうえで心掛けていること、長が付く立場になった今、心掛けていることなどをお尋ねしました。
井上 拓郎(いのうえ たくろう)さん 沼田市出身 前橋市在住
取材日の1週間ほど前、井上さんからお電話が。「ご都合が悪くなってしまったのかなー」と思いながら出ると、ですね、これがなんと! 「口下手なものですから、原稿を書いて当日、持っていきますが良いでしょうか?」とのお尋ね。前回の横山さん(アイオー信用金庫)もそうでしたが、取材へのご対応がうれしすぎます! ということで、今回は井上さんが書いてくださった原稿を元に取材をスタート。 井上さんが育ったのは、上毛かるたの「滝は吹割 片品渓谷」で知られる吹割の滝のすぐ近く。当時、通っていた平川小学校(現在は廃校)は、全校児童100人に満たない規模で、誰もが顔見知りというほのぼのとした雰囲気でした。井上さんの学年は校内で最も人数の多い16人。そして、その内の半分が井上姓だったといいます。通学路の途中にはクマよけのためのドラム缶があり、それを鳴らしながら登下校したそう。大人になってから話すと、大抵驚かれるといいます。 お父さまはホテルマン、お母さまはご自宅で理容室を営んでいたことで、2人とも週末は忙しく、おじいさまやおばあさまと過ごす時間が長かったといいます。 同級生のほとんどが少年野球チームに所属。井上さんも、小学校2年生から始め中学校でも続けましたが、高校進学を機にやめたそう。というのも、進学先の沼田高校までは遠く、ひと山超えて行かなければならなかったのです。 その後、駿河台大学経営情報学科に入学。就職を考えたとき、お母さまが営む理容室に訪れる信用組合の渉外担当者の姿に親しみを感じ、この道を選びました。
配属先は、地元の沼田支店。まずは、内勤で預金や融資などの業務知識を学びます。「なかなか仕事で貢献できませんでした」と苦笑する井上さん。同期の男性職員は、早い人だと入組後、わずか1カ月で外回りを始めていましたが、井上さんは1年経っても担当が変わることはありませんでした。ようやく外回りになったのは1年半後。同期の中では最も遅い渉外デビューだったそうです。 憧れの渉外係は「楽しかった」とニッコリ。かといって「楽しいこと」ばかりではありませんでした。雪が積もったある日、こんなことがありました。長靴をはいてお客さまの元を訪れるとご店主に止められます。「靴底についている雪をきれいに払ってから入るんだよ。そうでないと、靴底についた雪が溶けて店内が汚れてしまうよ」と。言いづらいことをあえて指摘してくださったことを「有難かった」と素直に受け止める井上さん。この心持ちが、多くの学びを得ることにつながりました。 渉外担当者は、朝のミーティングが終わると、ホワイトボードに案件などを書き込みます。「できる担当者の欄は、情報がびっしり。そのびっしりさに憧れました」と振り返ります。井上さんは、というと、お客さまから情報を得てもなかなか案件に昇華させることができませんでした。そうこうしているうちに他の金融機関に流れてしまうという悔しい思いを、何回も何回も経験したそうです。 それでも諦めたり、放り出したりせず、真面目にコツコツ根気強く続けるのが井上さんの強み。月に数件ずつ、コンスタントに融資を実行させるようになると周りから「井上は頑張っているな、目立たないけど結構やっているよな」と言ってもらえるようになったのです。自分を認めてくれるこの声に、やりがいを感じるようになってきました。 3年目には大利根支店(前橋市)に転勤。そこで「伊勢崎地区にすごい職員がいる」という話を耳にします。他店で頑張っている、しかも年齢的にも変わらない職員がいることがモチペーションになり、さらに上司にやる気を引き出してもらったことで一層仕事が楽しくなってきたそうです。 井上さんは、担当する地区の住宅地図を引っ張り出して事業所をチェックし、新規・既存に関係なく訪問してヒアリングを続けました。「今、思えば非効率的。時間ばかりかかって全く仕事が終わらず、上司に怒られることが多々ありました」と井上さん。しかし、この地道な努力が、顧客拡大も図ることにつながるのです。
大利根支店で6年間勤務した後、伊勢崎営業部へ異動。「辞令が出た際は、不安しかなかった」と言います。現商工会議所会頭の御膝元である伊勢崎ですが、得ている情報が少ないうえ、大型店舗の経験もなく、完全にアウェーの環境に思えたのです。 転勤後、間もなく感謝祭を実施。このとき、協力を仰いだのが同組合と取り引きのある若手経営者で構成する「健山会」のメンバーです。お客さまが支店のイベントの手伝いをしてくださるという結びつきの強さにビックリすると同時に深く感動したそうです。 井上さんご本人も伊勢崎で開かれるイベントに同組合を代表する職員として参加。100人神輿の担ぎ手として祭りを盛り上げたり、伊勢崎まつりには実行メンバーとして関わったりしたそうです。 もちろん仕事も大忙し。「当時、私以外7人いた渉外担当者は皆、仕事が早すぎてついて行くだけで精一杯。毎週金曜日に自分にご苦労様の意味で、五郎蔵でラーメンを食べ、替え玉が習慣に。おかげで20キロ増量。現在に至っています」と照れ笑いします。当時、頑張った証を残しておこう、というわけですね! その後、豊受支店に異動。現在は、支店長代理を務めています。 同組合の掲げるクレドで井上さんの「マイクレド」は『私は、上質なサービスをスピーディに提供し、たくさんの"ありがとう"を集めます』。特に意識しているのが「スピーディ」と「たくさんの"ありがとう"を集め」です。 スピード感をもって対応すれば、もし仮にミスをしたとしても、リカバリーできることがある。また、素早くこなす事でお客様に喜んで頂けることがたくさんある――。経験からこう確信しています。 もうひとつ、心掛けているのは「出来ない理由を探さず、できる方法を考える」こと。歴代上司は、お客さまのために出来ることを探す人しかおらず、その姿を見て自然に染みこんだのだそうです。 「今まで何かの長で仕事をした事は無く、常にプレイヤーだった」と言う井上さん。「出来るタイプの人間ではない。どこに行っても劣等生」と自分を評しますが「だからこそ、今後部下を持った際には部下に寄り添った仕事をしていきたい」と瞳を輝かせます。 今年度からは、同組合で抜擢され、伊勢崎YEGのメンバーに。「本部から話を頂いた際は、ビックリした」と井上さん。「組合内には実務に秀でていたり、人とのつながりに長けていたり、と優秀な職員がたくさんいるため、まさか声が掛かるとはまったく思っていなかった」と話します。 前任の小野里育三さんは、大変なときに支えてくれた尊敬する上司。その後任に選出され、胸は高まります。 「私にできることは今も昔も変わらず、コツコツ頑張ること。一番苦しい時期を伊勢崎で仕事させて頂き、支えて頂いたことを全てのお客さまに感謝し、伊勢崎に貢献出来るように頑張っていきたい」と前を向き、話してくださいました。
あかぎ信用組合豊受支店 ◆住所/伊勢崎市除ヶ町243 ◆電話/0270-32-0187 (伊勢崎営業部) ◆住所/伊勢崎市緑町5-5 ◆設立/1954年 ◆業務内容/金融機関業務及びその付帯業務
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
※ご注意:本記事は上記の日付をもとに作成しています。実際にお店等に行く方におかれましては、事前に電話等で確認してからお出かけ下さい。記事と情報が異なる場合、imapは一切責任を負いませんのでご了承下さい。(記事と情報が異なる場合もありますので ご了承下さい。)