経営者の輪Vol.322 花笑みファームの代表「石田浩一さん」
経営者の輪Vol.322 花笑みファーム 代表の石田浩一さん
今回、お話を伺うのは、花笑みファームの代表、石田浩一さん。農業を始めようと思ったきっかけ、19歳から道場に通い今では指導する側になった少林寺拳法のことなどをおたずねしました。
人生の折り返し地点で志した就農
石田さんの、おじい様もお父様も自営業。自分の自由にできる反面、良いときばかりではないことを間近で見ていた石田さんは、自らの将来を「会社員がいい」と思っていました。
高校卒業後、就職したのは、エアコンなどダクトカバーの取り付けをする会社。3年後、技術を身につけたいと溶接を習得できる鉄工所に移り、9年に渡って腕を磨きました。その後、スチールなど特殊なシャフトやギアの卸メーカーに勤務。スチールの線といっても、ピアノ線くらいの細いものから電信柱くらいの太いものまでとさまざま。長さも3~4メートルと長いものもあり、注文に応じて荷造りするだけでもとても大変だったそうです。
自ら選んだ「会社員」でしたが、時間をコントロールできないことに、もどかしさを感じるようになっていました。そう思うきっかけをつくったのが、日本一忙しいと言われる講演家、中村文昭さんの存在です。講演会や書籍を通じて「何のために?」と問い続ける中村さんの話に、どんどん引き込まれていった石田さん。中村さんの生の声を聞ける機会は限られています。「会いたい人に会いに行く時間がほしい」と思い始めました。
同じころ、農業従事者と出会い、日本の食料自給率が低いこと、農業従事者の平均年齢は70代ととても高いことを聞き、危機感を覚えました。「自分で農作物を作れたら…」石田さんの希望はどんどん膨らんでいきました。
人々が生きていくうえで欠かせない食を支える農業、その農業が直面している危機を解消する一助になりたいと就農を決意します。人間力を磨くためにも、周囲に影響を与えられる人になるためにも、当時40歳で人生の折り返し地点に立っていた石田さんは、自分で事業をおこしたいと思ったのです。
農業は、自ら培ってきた経験の集大成
しかし、周りは大反対。特に2人の幼稚園児にかかりきりの奥様は、強く反対しました。
確かに、その時点での石田さんは畑も機械もなく、知識も技術も「家庭菜園」クラス。「無理」と判断される条件ばかりがそろっていました。そんな時、石田さんと同じ、全く新規で就農した人と縁ができ、研修をさせてもらえることになったのです。2年間の研修を受けると認定農業者となり、さまざまな支援が受けやすくなります。このことで、石田さん曰く「半ば、強引に」周囲を説得。夢の農業を始めました。
天候に関係なく畑に出て作業をする大変さはありますが、種をまいて花が咲き、実をつけ、それを収穫する喜びや、通りがかりの人から「頑張っているね」と声をかけられるうれしさは、今までに味わったことのない充実感でした。
また、実をつける前、野菜が成長する過程で手を入れる剪定がとても大切なことも学びました。きちんと剪定をして花が咲くと、良い実になります。「花がニッコリと笑って咲ける」環境を整えることは、野菜の育ちを良くする第一歩。「花笑みファーム」の名は、ここからきています。
また、農業は今まで石田さんが仕事で体得した全てが凝縮されていることに気づいたのです。「今までやってきたことに何一つ無駄はありませんでした」と微笑みます。
石田さんが作っているのは、ズッキーニ、ナス、ネギなど。規格が多少緩くなったとはいえ、どうしてもそれを外れてしまう野菜が生まれてしまいます。「夢は、その野菜を生かして、子ども食堂を作ること」と石田さん。そこには「みんなで食べる食事はおいしいことを、孤食になりがちな子どもに伝えたい」という思いがあります。また「食事作りを手伝いたい」という近くの住民の力を生かすこともできます。子どもとシニアの交流も生まれるかもしれません。誰かの居場所をつくることにもつながります。それぞれ違うものを使っている農家仲間と協力することもできます。集大成である農業を通じて、人の輪をつくりたいと石田さんは考えています。
少林寺拳法で人づくりに尽力
石田さんが「人」について考えるバックボーンになっているのが、19歳のときから続けている「少林寺拳法」です。少林寺拳法とは「護身練胆」「精神修養」「健康増進」の三つの徳を備えた修行法。誰かと戦うためのものではなく、不正な暴力から自分や他人を守るためのもので「人づくりの行」とも言われています。何かあったときに身近にいる大切な人を守りたい、と始めましたが、次第に「他人の幸せを考える」「社会に役立ち、日本をよくするための人育て」という精神性に強く惹かれるようになりました。
まだ体調を崩しやすい小中学校時代に、皆勤を果たした石田さん。少林寺拳法のお稽古で今までに休んだのは、出張でどうしても帰れなかった2回だけだそうです。
14年前からは太田東高校の監督に就任。部員たちは全員未経験者で、最初は勝てずに悔し涙を流すと言いますが、石田さんは「最後はうれし涙で終わりにさせたい」との思いを込めて指導しています。大切にしているのは「今、何をしたらよいのか」自ら考え、行動できる力です。先輩後輩に関係なく、向上のために意見する必要性も伝えます。「言いづらいことでも言うことは、社会に出てからも役に立つ」と石田さん。高みを目指すこの姿勢から、同部は今では、毎年関東・全国大会に出場。太田市の「強化指定運動部」に指定されるほどになりました。
また10年前からは、自らの道場を持ち、子どもから大人までの指導にあたっています。石田さんが得意とするのは、それぞれの子どもによって異なる「やる気スイッチ」を自然に押すこと。性格を見抜いたうえで、彼らが「一歩」を踏み出し、新しいチャレンジを自らできるよう促します。そうして変わっていく子どもたちの姿を見て、保護者が一番喜ぶのだそうです。
日々、艶やかに光る美しい実を目指し、それぞれの苗の特性を見極めながらハサミを入れ、野菜の生育に務める石田さん。その姿勢は「人づくり」にも共通するものがあるようです。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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