今回、お話をうかがうのは、株式会社幸和商会 代表取締役の 中田貴裕さん。現職に至るまでの経緯とポジティブ思考がもたらした幸運、スタッフの育成などについて教えていただきました。
中田 貴裕(なかだ たかひろ)さん 玉村町出身 伊勢崎市在住
玉村生まれの中田さん。小さい頃から好奇心旺盛、何でも挑戦したがる元気いっぱいの子どもだったそうです。中でも好きだったのは、釣り。川に行っては、魚釣りを楽しんでいました。 その頃、中田さんのお父様は自分で会社を興して、スーツの仕立てをなさっていたそうです。主な取引相手は、郵便局長。各郵便局を回っては寸法を測り、身体にピッタリのスーツを納品していたそうです。たくさんのお客さまを抱えていたお父さま、毎年、制作する年賀状の数は300〜400枚にも上りました。年末になると、当時、はやっていたプリントゴッコを使って印刷。「印画紙に焼き付ける時にピカっと光るのが面白くて」と笑う中田さんは、暮れになると面白がって手伝いをしていたそうです。 大勢の知り合いに囲まれ、賑やかに過ごすお父さまの姿に憧れ、中田さんも自然と自営業に就きたい、と思うようになっていきました。「進学の際、樹徳高校の商業科を選んだのも、そんな夢があったからかもしれませんね」と振り返ります。 高校卒業時、物流に興味を持った中田さんは、希望通り物流会社に就職。フォークリフトに乗って、仕分けをしながら荷物を積む仕事をしていました。入社から1年半後、ひとつの転機が訪れます。仕分けの責任者を任されたのです。それも、数が多い都内に向けの仕分け。大抜擢でした。 「みんなが面倒がるような細かな仕事が好きだった」という中田さん。好きなことで責任ある立場に立てた喜びで、どんどん仕事が忙しくなっていきました。
3年後、サッシ関連の会社に転職。住宅の開口部のサッシの組み立てから取り付けまでを担当していました。 ここでも熱心な中田さんは引っ張りだこ。あっという間に営業のサポートをするポジションを与えられるのです。お客さまのニーズを汲み取り、的確な提案をする営業職をやってみたいと思っていました。社内で「誰かできる人?」と言う声を聞くと、真っ先に手を上げていたのだとか。そんな中田さんは社内で、ますます信頼される存在になっていきました。 やがて、念願の営業職に。中田さんが好きだったのは、新規の客の獲得。建設会社を自分でリストアップし、一社一社、訪ね回ったそうです。 「倉庫を持っている会社に出会うと、迷わず入って行きました」と中田さん。倉庫を持っていると言うことは、ある程度、裁量のある工務店という表れだそうです。しかし、門前払いを食うことも少なくありませんでした。そんなときは、落ち込まずに「ここでくよくよしていたら、その時間がもったいない。次へ行こう」とすぐに気持ちを切り替えたのだとか。 「上司に鍛えられたおかげ」と中田さん。当時の上司は厳しく、きついことでもはっきり言う人だったそうです。いちいち落ち込んでいられない、と切り替え上手になったそう。また「次に何をしたら良いか」考え、行動することが新規顧客獲得につながりました。 このような方法を2〜 3年続けているうち、中田さんはあることに気づきます。それは自分で見ず知らずの会社を回るより、紹介していただける方が契約率が高いということ。行きやすいうえに、その後の関係が長く続きます。また、紹介をいただくには、信頼関係が大切と言うことも学びました。 建設現場は電気、水道、左官など実に20種類以上の職種が集まります。中田さんは自分のわからないことを、職人さんの手伝いなどをして学びました。それが、いずれ必ずお客さまの役立つことになると思っていたのです。 頻繁に現場に足を運んで、さまざまな職人さんとコミュニケーションを重ねた中田さん。その中で雑談のように「困りごと」が出てきます。そんな話を聞く度に「自分だったらどんな形でその人の役に立てるだろう」と考え、提案したそうです。結果的にはそれが仕事に結びつき、さらに紹介にも広がると言う良い結果を生みました。
5年前、中田さんのそれまでの毎日が一変する出来事が起きました。ある日、いつもはしないのに何故か仕事先からご実家に電話をしたのだそうです。すると普段はすぐに出るはずなのに、呼び出し音が鳴り続けていました。胸騒ぎがした中田さんは即座に家に戻ります。するとそこにはご両親の姿が見えず、食卓には朝食が用意されたままの状態で残っていました。 心配した中田さんがお母さまの携帯電話にかけると、お父さまが救急車で病院に運ばれたとのこと。お父さまが回復するまで、中田さんが務める会社は、仕事の合間にお父さまの仕事を手伝うことを認めてくれたのです。こうして中田さんは、自分の仕事を続けながら、スーツを届けるために郵便局を訪れるようになるのです。 配達に訪れた中田さんに、局長たちは興味津々。「普段は開口部の設置などの仕事をしている」と話すと、ブラインド交換をしてほしい、シャッターを付け替えてほしい、照明をLEDに変えてほしいなどさまざまな要望が寄せられるようになるのです。自分の知識や技術がどこまで通用するのだろうと、チャレンジすることにワクワクを感じた中田さん。退職し、お父さまが設立した会社を引き継ぎながら自分でサッシ関連の仕事を始めました。4年前のことです。 元号が令和に変わるタイミングで、代表取締役はお父さまから中田さんに代わりました。経営者になって感じたのは、人のつながりの大切さ。かつての仕事仲間や上司が大手のメーカーを紹介してくれ、直取引をするようになりました。これは中田さんにとっても大きな自信になりました。 今、中田さんが重点を置いているのは、クレーム対応と社員教育です。クレームは決して多くはありませんが、寄せられればみんなで共有。何がいけなかったのか、そこからどんな提案をすれば良いのか、を考え改善します。お客さまのニーズを把握することにも、商品の知識を広げることにも役立ちます。一見マイナスに思えるクレームは、次の仕事につながる種なのです。 また社員には、自信を持ってほしいと望んでいます。自信を持つことは、強みや信頼につながります。「チャレンジして失敗し、消極的になる社員を元気付けることに、自分のポジティブさが生かせる」と言う中田さん。悩みを丁寧に誠意を持って聞き、その対応を共に考えることで落ち込んだ社員は、少しずつ自信を取り戻しています。今後は、営業所を増やしたり、事務所を新しくしたり、ネットも活用していきたいと夢は広がります。 今でも中田さんの趣味は、釣り。「海でのんびり釣り糸を垂らすのが好き」と言いつつも、釣れないのは餌なのか? 深さなのか? と要因を考えてしまうと言う中田さん。常に考え、改善し、行動に移すのは仕事でも趣味でも変わらないようです。
株式会社幸和商会 ◆TEL/0270-22-5059 ◆創立/1975年 ◆営業時間/7:30〜17:30 ◆休日/日曜、第2、4土曜 ◆業務内容/アルミサッシの組み立て、搬入、開口部のリフォーム 取材日 2022年8月
◆住所/伊勢崎市宮子町1162-3
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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