経営者の輪Vol.278 桐生信用金庫 伊勢崎東支店 支店長「篠原誠さん」
経営者の輪Vol.278 桐生信用金庫伊勢崎東支店の支店長の篠原誠さん
今回、お話を伺うのは桐生信用金庫伊勢崎東支店の支店長・篠原誠さん。お父様~篠原さん~3人のお子さまをつなぐ「野球」の輪、お客様と距離を縮める極意、仕事のやりがいなどをうかがいました。
就職先を決めた理由は重なる偶然と親近感
小学生の時に野球を始め、プロ野球選手に憧れていた篠原さん。その夢が税理士へと変わったのは、高校生の時のことでした。お父様の知り合いの税理士さんがカッコ良くて、その姿に憧れたこと、篠原さん自身数字が好きだったことから日本大学商学部に進学しました。
ところが、人が集まる賑やかな雰囲気が好きという自分自身に気付いてからは「独立して税理士は向いていないかも」と感じるようになったのだとか。
就職活動をする際は、長男という立場からUターン就職を考えて企業探しをスタート。合同企業説明会で「たまたま」目にしたのが桐生信用金庫のブースでした。その時に接した担当者が「たまたま」大学のOB。と「たまたま」が重なったことに加え、ご自宅の決まった場所にいつも桐生信用金庫のカレンダーが貼ってあって親近感を持っていたことから、同金庫への就職を希望したそうです。
「ここしか受けなかったんです。落ちたらどうするつもりだったんでしょうね」と自らを振り返って笑う篠原さん。無事に希望が叶い、桐生信用金庫で社会人の一歩を踏み出しました。
独自の方法で改善を目指す
初めての赴任先は本店営業部。3カ月間融資を担当、その後、出納係や窓口を経験し、夏には渉外担当としてお客様の元を回り始めました。
「私が担当したのは、本店周辺。当金庫はお客様からとても愛されていて、私自身もお客様から本当に可愛がっていただきました」と懐かしそうに話します。顔を出すと「お茶を飲んでいって」「ご飯は食べたの?」とまるで子供や孫が来たかのように親しく出迎えてくれるお客様たちに恵まれた結果、15キロも太ってしまったのだとか。
それにしてもどうしたら、こんなにもお客様の心をガッチリつかみ、可愛がられ、信頼されるようになるのでしょう?
そこには、篠原さん流のある秘訣がありました。
一つは、お客様と共通点を多く持つこと。二つ目は、お客様と対峙するのではなく、同じ方向を見る、視線の先を合わせること。三つ目は、必ず一度は「笑わせる」こと。笑いは不思議と、一瞬で人と人との距離をぐっと縮めます。
この頃を振り返ると思い出すのは「失敗したことばかり」と照れ臭そう。しかし「失敗を繰り返すことでできることが増えていった」と話します。一つ失敗したら、次は同じミスをしないように意識する。この意識の積み重ねが篠原さんを大きく成長させると同時に、同金庫の信頼を強めることにつながるのです。
長く担当したのは、融資係。お客様と上層部の間に挟まれ、夜眠れなくなるほど悩んだこともありました。しかし「融資が叶ってお客様が夢だった創業を果たした時、またその店舗に人がズラリと並ぶのを見たときは、至極の喜びを感じた」と明るい表情を見せます。
5年前に支店長に就任。その際「支店長はこんなにも視野の広さが必要で、こんなにも責任あるものなのか」としみじみ思ったそうです。求められるのは、正確かつ迅速な判断力。一国一城の主ならではのやりがいでもあり、最も慎重に取り組むべきことでもあります。
もう一つ、強く感じたのは、人材育成の重要性です。職員本人のため、企業存続のため、お客様のため、そして篠原さんご自身のためにも、新たな力を存分に伸ばすことは必須。そのためにさりげない働きかけで、自ら気づくきっかけをつくっているそうです。
最たる例が、伊勢崎東店で独自に始めた「男女混合による清掃」です。今まで男性職員は外、女性は店内と掃除場所を分けていました。掃除の仕方を見ていて、男性は広く浅く、女性は狭く深く取り組む傾向があることに気づいた篠原さん。お互いがお互いのやり方を見る中で、視点の違いに気づき、考えの幅を広げてほしい、という願いを込めて男女がひとつのチームになって清掃活動をするよう変えていったそうです。
また「女性も、店内を出て外回りをした方が良い」という持論も。「外回りを経験することで、引き出しは確実に増える。お客様とも自然に会話ができるようになる」と言います。中でも、クッションと言われる世間話の仕方が上手になるのだとか。実はこの「世間話」がとても重要。お客様の興味関心を知る上でも、距離を縮める上でも欠かせないものだそうです。
今後、力を入れていきたいのは、コロナ禍で困っているお客様の支援。「信用金庫ができることは、お金の面のサポートだけではない」と篠原さん。同支店では、飲食店を営んでいるお客様のチラシを店内に置いています。こうすることで、飲食店とチラシを手に取るお客様との双方向のコミュニケーションが生まれます。また、入口脇には冷凍ラーメンと餃子の販売機を設置。売上は右肩上がりです。「今後もこのようなさまざまなかたちでお客様のビジネスチャンスを広げていきたい」と希望を話します。
野球一家で女子野球のヘッドコーチも。 息子のセンバツ21世紀枠群馬代表が一番の思い出
仕事に必要なことのひとつに「遊び」と「遊び心」を挙げる篠原さん。「遊び」は、お客様との共通点を増やし、「遊び心」は柔軟な発想を生み出す原動力になります。
篠原さんの「遊び」と「遊び心」のもとになっているものの一つが、小学生のときに始めた野球です。高校では少し変わりますが、ソフトボールで活躍。それがきっかけで、社会人になってからはお父様が作ったソフトボールチームに所属し、大会で3度も準優勝に輝いたそうです。
「野球一家なんです」と言うだけあって、篠原さんのお父様も2人の息子さんも、そしてお嬢さんも野球経験者です。
息子さん2人は、篠原さんの母校でもある館林高校で野球部に所属。次男さんがキャプテンを務めていた今年の春は「センバツ2021年の21世紀枠」の群馬県代表に選出されました。多くの部員が大学進学を目指しながら、2020年の秋季群馬県大会では4強入り。前年秋・前々年の秋も8強入りという好成績で、文武両道が評価されたうれしい結果でした。
篠原さんも父母会長として尽力。息子さんの野球に携わった15年間で「一番の思い出でした」とほほを緩めます。
また、お嬢さんが小学校1年生になる年には、知人達と一緒に女子の野球チームを立ち上げ。ヘッドコーチに就任しました。
練習は週に1度3時間。限られた時間の中、様々な学校の女の子たちが集まって練習に励みます。ここでも女子と男子の違いを目の当たりにしたと言う篠原さん。すぐに打ち解ける男子と違い、相手との距離を確認しながら心を許していく女子。なかなか縮まらない距離に頭を悩ませたこともあったそうですが、時間が経つにつれ、すっかり打ち解け「こんなにうるさい生き物はいない(笑)」というほどの仲の良い姿を見せるようになりました。
印象に残るのは、やはりお嬢さんが敷島球場のマウンドに立ったこと。ヘッドコーチとして、親として、ドキドキ、ワクワク、ヒヤヒヤが入り混じった気持ちだったに違いありません。
そのお嬢さんも来春、小学校卒業。「野球は続けない」と口にしているそうで、長かった子どもたちとの野球も終わりを迎えます、と思いきや中学の野球チームから声がかかっているのだとか。「休日は子供と共に野球」という篠原さんのプライベートタイムは、まだ続きそうです。
企業情報
桐生信用金庫 伊勢崎東支店
◆住所/伊勢崎市上諏訪町2113-16
◆TEL/0270-21-6555
◆創業/大正14年2月14日
◆窓口営業時間/9:00~15:00(ATM平日8:00~20:00、土日祝8:30~17:00)
◆窓口休日/土日祝
◆業務内容/金融業
取材日 2021年12月
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今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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