経営者の輪Vol.264 株式会社ヤマトの営業「大和建史朗さん」

経営者の輪Vol.264 株式会社ヤマトの営業・大和建史朗さん

今回、お話を伺うのは株式会社ヤマトの営業・大和建史朗さん。創業から103年を迎える同社を経営する家に生まれながら、当初は後継者になるとは考えていなかったそう。その気持ちが変わったきっかけや、将来の夢についてたずねました。


 

プロフィール

大和建史朗(やまと・けんしろう)さん

伊勢崎市出身

伊勢崎市在住

 

アルバイトから社員へ

株式会社ヤマトは、創業大正7年という歴史ある会社です。4代目にあたる現在の社長は、大和さんのお父様。

 

このように歴史と伝統に育まれた株式会社ヤマトですが、大和さんご自身は「家業を継ぐ」という気持ちがなかったと言います。時々手伝いながら、自由気ままに友達と自転車で遠方まで出かけたりして過ごしていたそうです。ご両親もまた、大和さんに将来を押し付けるようなことは一切言わなかったとか。ただ、おばあ様は、後継ぎとしての大和さんに早くも期待をしていたようで、よく「後を継げと声をかけられていましたね」と振り返ります。



 

状況が変わったのは、お盆を控えた夏のある日。スタッフがやめることになり、手伝わざるを得なくなったのです。退職を控えたスタッフと一緒にお客様のご自宅へ向かって、盆棚づくり。「初日から専門用語がどんどん出てきて、頭の中は『?』でいっぱいになりました」と苦笑します。ここで「?」を「?」のままにしておかないのが大和さん。ひとつひとつ疑問に思ったことを聞いて覚えていきました。



 

このころには「お父様の後を継ごうと心は決まっていた」と言いますが、その思いを周囲に明らかにすることはありませんでした。おばあ様と専務からは「正社員になれば?」と誘いがあったそうですが、どこかでまだ「特定の会社」に縛られない自由さを感じていたいと、あくまでも「アルバイト」の立場を貫いていたそうです。



 

やがて、青年会議所に入会するという話が出始めると、大和さん自身がアルバイトという肩書に対してどことなくおさまりの悪さを感じるようになってきました。そんなとき、再び専務からかけられた「社員になってね!」のひと言で踏ん切りがつき、社員になったのです。


人と深くかかわることが人生の糧に

大和さんの仕事は、電話を受けると霊柩車を運転してご遺体を迎えに行くところから、ご葬儀をコーディネートしてお見送りするところまで、人の旅立つ際のセレモニー一連に関わります。3日に1度は夜間電話を受ける当番のときは、やはり気が張るそうです。お客様の割は伊勢崎、前橋、太田、高崎に出向くこともあります。



 

「不思議と初めてご遺体に直面したときも動揺することはありませんでした」と大和さん。人は環境を選んで生まれてくる、という話がありますが、大和さんも自ら選んだ環境、だったに違いありませんね。「まだまだ」と頑張って避けていても自然と行きつくところに行きつき、能力を発揮しているところを見ると、そう思わずにはいられません。



 

「仕事とはいえ、いたたまれなくなることもあります」と今までの穏やかな表情から一転。「未来のある若い人や、よく知っている方のご葬儀は胸が締め付けられます」と顔を曇らせます。それでも前を向けるのはお客様から「頼んでよかった」という喜びの声をいただけるから。なかなか一般の人ではわからない葬儀のマナー、流れ、意味などを丁寧に説明することで「感謝していただけると、やってよかったと思います」と再び明るい表情を見せます。



 

また、ご葬儀を通してそれぞれのご家庭とかかわる中で、さまざまな話を聞くことができます。「普通だったら接することのない年代や職業のご家族と、ご葬儀をきっかけに深い話ができるのは人生において大きな糧になる」としみじみと話します。


みんなにもっと快適なホールを、いつか

「最近、家族葬が増えてきました」と大和さん。その割合は90%近くにものぼるそうです。株式会社ヤマトでは、家族葬に特化した「しのぶの郷」を新設。ホール内に設けた和室は、ふすまを開けるとホールからの続き間に、ふすまを閉めれば独立したひとつの部屋として利用できます。ご遺体の安置もできるので、お客様からしても安心。喜ばれているそうです。



 

大和さんにとってお父様は、家では父親、職場では社長。「でも僕が父を『社長』と呼ぶのは、おちゃらけたときだけですよ」と茶目っ気たっぷりに言葉を弾ませます。「反抗期はなかった」という仲のよい大和さん親子。親子経営のメリットを「分からないことは気兼ねなく聞けるし、言いたいことも言える点」と話します。逆にデメリットは「フランクすぎて、ゆるめになりがちなところ。気を引き締めないといけませんね」とニコリ。



 

商工会議所青年部に所属するようになってからお父様の話を聞く機会が増えたそうです。そこには「優しくて穏やか」家でも外でもまったく変わらないお父様の姿がありました。



 

「長い歴史あるヤマトを継ぐというプレッシャーは少なからずありますが」と前置きをしたあとで「今後、シャワールームや宿泊施設などを併設し、故人が旅立ちのときを迎えるまでご家族とゆっくりすごせる施設をつくりたい」と希望を語ってくださいました。



企業情報

株式会社ヤマト

 

◆住所/伊勢崎市三光町7-5

◆TEL/0270-24‐8650

◆創業/1918年

◆業務内容/生花、供物、仏具、仏壇、引き出物、寝台車、霊柩車、葬儀







 取材日 2021年7 月

 



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