経営者の輪Vol.263 株式会社ゴダイグループ 取締役「神林 将さん」

経営者の輪Vol.263 株式会社ゴダイグループ 取締役・神林 将さん

今回、お話を伺うのは株式会社ゴダイグループ 取締役・神林 将さん。高校球児からヘアスタイリストへ。そして、「供養のワンストップサービス」を実現した株式会社ゴダイ 取締役への大転身! その歩みと仕事を通じてわかった大切なことについても聞きました。

プロフィール

神林 将(かんばやし まさし)さん

桐生市出身

伊勢崎市在住

 

今の自分を作ってくれた野球

「小学生の頃はプロ野球選手になりたい、と文集に変えた覚えがあります」そう照れくさそうな表情で話し始めた神林さん。2つ年上のお兄様の影響で、小学校時代3年生から野球を始めました。中学でも野球部に所属。この頃から身長がぐんぐん伸び始め、卒業するまでになんと20センチも大きくなっていたそうです。

 

卒業後は、お兄様と同じ桐生工業高校へ。当時、硬式野球部のキャプテンを務めていたお兄様に続くように野球部に入部します。「(野球を)やらないという選択肢はありませんでした」(神林さん)。

 

ところが中学と高校の野球はまるで別物。「今までやっていたのは、草野球だったかと思うほど、高校は厳かった」と言います。朝練は当たり前、放課後はまた練習。暗くなるまで一心にボールを追いかけていました。オフシーズンは陸上部員と一緒になってマラソンの練習。顧問からは負けるなと言うプレッシャーがかかっており、いつでも全力、手が抜けなかったと振り返ります。あまりの厳しさから、入学時20人いた同学年の部員は卒業時には10人に。しかし「辛いばかりではありませんでした」と神林さん。チームメイトと好きな野球をするのはやっぱり楽しかったし、苦楽を共にした友人は一生の宝物。今も付き合いが続いています」とほほを緩ませます。

 

また「辞めたいと思うこともありましたが、その一方で『辞めたら負けだ』という思いもありました」と神林さん。この思いが野球を続ける原動力になっていたそうです。穏やかでソフトなイメージの神林さんの意志の強さを感じます。

 

そして「高校時代野球をやっていなければおそらく人格が変わっていた」ときっぱり。「野球をしていなかったら、フラフラと流されて今の自分はありませんでした」と言い切れるほど、野球が神林さんに与えた影響は強かったのです。

 

 

卒業後は東北工業大学に進学します。初めて野球から離れ、坊主頭から卒業。「ドライヤーをかけるのが嬉しかった」とは、なんとも可愛らしいエピソードです。

進学時は、地元を離れ一人暮らしをしたいと桐生を離れた神林さんですが、地元を離れたことで逆に地元の良さを痛感。卒業後は地元群馬に戻る事を決めました。


偶然の再会で変わった運命

卒業後は、先輩に誘われて冠婚葬祭の会社へ。社員になるには通常、3か月の試用期間内に会社の規定を連続してクリアしなければならないのですが、神林さんは違いました。社長から突然「明日から社員として来るように」と声をかけられるのです。そして翌日から営業部で婚礼のフロントを担当。異例の大抜擢でした。

 

しかし、神林さんには夢がありました。それは美容師になること。高校時代から憧れてはいたものの、美容師は何か特別なセンスがないとなれないのでは? と言う思い込みが夢を押さえつけていたのです。ところが身近な人が「美容師を目指して学校に通っている」と聞いて、いてもたってもいられなくなりました。会社を辞め美容室で働きながら通信教育で美容師資格取得のための勉強を始めました。

 

「常に気持ちは焦っていました」と振り返る神林さん。大学生も社会人も経験した分、同年代は遥か先を歩んでいて、同期はみんな年下。「この時は練習の鬼でした」と神林さん。朝早く行っては練習。日中、お客様のいない時間を狙ってまた練習。お店が終わってからさらに練習と練習を重ね、毎日数時間しか寝なかったそうです。神林さんが練習を始めると、同期で入った女性スタッフも負けじとハサミを握り始める。 こうして切磋琢磨しながら腕を上げ、27歳で念願のスタイリストになりました。

 

神林さんの得意なスタイルは、ゆるふわのパーマと前下がりのボブスタイル。トップのボリュームと前下がりの角度が絶妙で多くのお客様から指名をいただいていたそうです。

 

35歳までに自分のお店を出すことを夢見ていた神林さんに、当時、お付き合いをしていた今の奥様からゴダイの創業者であるお父様が跡を継いでくれることを望んでいると聞かされます。当時は、まったく興味がなかったという神林さん。やがて関係がギクシャクして、別々の道を歩むことにしたそうです。

 

しかし、およそ1年後、偶然の再会。再び付き合うことになると、その3年後にお父様本人から「継いで欲しい」と再度話をもらい、心を固め株式会社ゴダイへ入社したのです。

 


仕事を通して再認識した家族の大切さ

ゴダイグループのメリットはなんといってもワンストップで完結できること。葬儀、仏壇、墓石、法要など、担当者を変えることなくスムーズにできるので安心です。また「常識にとらわれることなく流通の合理化を図る」という社長の潔い決断から、業界に革命を起こしたと言われるほどの質の高いサービスと低価格を実現したこと。「できれば見積りをとって他社と比べてほしい」というほどの自信を持っています。

 

「現場の大変さを知っておいた方が良い」というお父様の考えから、入社直後は、墓石の工事部を経験。ある日、重い墓石が足に落下し、薬指と小指を骨折する大怪我をしてしまいます。「この経験があったから、危ない現場なのだと痛感。現場の安全第一に考えなければ」と強く思うようになったと言います。

 

その後、営業部へ移動。3年ほど経ったとき、新たに葬祭部を立ち上げることになり、そのオープニングスタッフとして携わることになりました。この仕事は、究極の非日常。お客さまから頼りにされ「ありがとう」と言われることがやりがいにつながっています。



 

「精神辛さや悲しさを和らげる存在になれれば」という神林さん。「できることが変わるわけではありませんが、お客様が安心していただけるように」との思いから葬祭ディレクターの資格を取得。今は、霊柩車の法令試験にチャレンジ中です。



 

神林さんが、少し残念に思うのはセレモニーが縮小される傾向にあること。お葬式をしなかったり、お経をあげなかったり、簡略化が進んでいます。「例えばお経をあげていただくことで、その意味は分からなくてもお経を聞くことで心が落ち着き、辛さが軽減されるということがあるんです」とぽつり。お葬式を開くのは大変なことですが、たくさんの過程を一つ一つクリアしていくことで、自分の心にけじめをつけられるという面もある、まさに「セレモニー」なんですね。



 

 

究極の非日常をお仕事とする神林さん。みんなにとっての非日常が神林さんの日常になると、家族に対する考え方が変わってきました。「仕事もちろん大事だけど、家族を大切に、出来る限り家族といる時間を持ちたい」と思うようになったと言います。また、「普段、あまり【死】を意識する事は少ないと思いますが、【死】を意識する事で【生】が今まで以上に鮮明に浮かび上がってきます。生と死のコントラストが変わる」とも話されていました。



仕事を通して大切な人の存在を再認識した神林さん。「今後は、葬祭部を分社化できるようになりたい」と展望を語ってくださいました。

企業情報

株式会社ゴダイグループ

 

◆住所/伊勢崎市三室町5277

◆TEL/0270-62‐6525

◆創業/1987年

◆従業員数/40人

◆業務内容/葬儀、霊園、墓石、仏壇、樹木葬、法事、保険、遺品整理







 取材日 2021年7 月

 



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