今回ご登場いただくのは、園部建設設計事務所の園部泰士さん。学生時代に感じた「いいな」を生かした建築や、これからのウィズコロナ時代で変わる建物に対する考え方などを伺いました。
園部 泰士(そのべ やすし)さん
伊勢崎市出身
伊勢崎市在住
園部さんが副所長を務める園部建設設計事務所は、およそ30数年前、園部さんのお父様が設立しました。創業当時、園部さんは小学生。事務所を訪れては、大きな製図台を前に設計図を書くお父様を「すごいなぁ」と思いながら眺めていた記憶が残っているそうです。 美術と同時に数学が得意だった園部さんは、高校卒業後、都内の大学に進学。美術と数学の両方が生かせ、興味もあった建築学科を選びました。都内で開かれる美術展に足しげく通ったり、著名な建築家の作品を見て回ったりしたといいます。 大学時代に見た建築物の中で特に印象に残っているのは、安藤忠雄さんが設計した京都の「TIME'S」。三条の町を流れる高瀬川に面する商業施設で、川という自然物を建築という人工物に取り込んだ造りが特徴です。京都の歴史ある時代背景や自然の中にあっても、違和感なく溶け込む新しい建築物から受けた衝撃は、のちの「建築士・園部泰士」に大きな影響を与えることとなるのです。
「強く意識をしたわけではありませんが、仕事をする父の姿に憧れを抱いていたと思います」と振り返ります。そんな園部さんは、絵を描くのが得意。小学生の頃、県で入賞し、県立美術館に展示された作品を家族で見に行ったこともあります。一方、スポーツも好きで小学生のときは野球、高校時代はサッカーやバスケットなども楽しんでいたそうです。
伊勢崎に戻った園部さんは、改めて建築を学びたいと前橋工科大学に入学しました。「高校を卒業してすぐに入った大学のときとは、建築に対して自分自身の心構えが違いました」と話す園部さん。地元で何かできないか? という思いが強まり、卒業制作では「建物を通じた伊勢崎の再開発」に取り組みました。大変、と噂には聞く理系の課題。泊まり込みで制作を続けることもあったそうです。 卒業後は、高崎にある設計事務所に就職。ここは、10人以上の設計士が在籍し、駅周辺の再開発や軽井沢のリゾート開発を手掛ける勢いのある会社でした。毎日がとても忙しく、朝まで仕事をしてそのまま新幹線に乗り込んで都内で打ち合わせ、ということも少なくありませんでした。逆に遅い時間まで都内で仕事をして、慌てて新幹線に飛び乗ることも。「新幹線の中で熟睡してしまい、気づいたときは長岡(新潟県)ということもありました」と当時を思い返し苦笑します。 ハードな毎日でしたが意識の高い仲間に囲まれ「仕事に妥協しない姿勢と、ちょっとやそっとじゃへこたれない忍耐力が身に付きました」と園部さん。仲間とチームを組んで設計をした建物が形になり、まわりのシートが外されたときの感動が次の仕事の大きな原動力になっていました。 仕事は順調。乗りに乗っていたまさにそのとき、お父様が体調を崩したという連絡を受けます。「もう少し学びたい」と思っていた矢先、後ろ髪を引かれながらも、園部建築設計事務所の将来を考え、入社を決意します。34歳のときのことでした。 園部建築設計事務所が手掛けるのは、店舗や工場のほか一般住宅。今までの仕事とは、関わる人の数も規模もまるで違うため、戸惑うことも多かったといいます。 そんな中で園部さんが大切にしているのは、まずはお客様を知ること。 実は、園部さんが同社に入社したとき一緒に、心強い仲間がメンバーに加わりました。建築士であり、インテリアコーディネーターの資格を持つ奥様です。図面を見せると、良い時は「すごくいいね」と、悩んだときはハッキリ意見を言ってくれるのもうれしいところ。奥様の存在そのものが励みになり、園部さんを仕事面と精神面の両方から園部さんを支えています。
何を求めているのか? どんな希望を持っているのか? をじっくりとヒアリングして真意を読み取ります。
お客様自身、本当に求めているものが明確ではないことも多くあります。聞いたことをそのまま実現させるだけでは不十分で「任せてもらったからには、いい意味で期待を裏切るような、要望以上のものを提案したい」というキリリとした表情で語ります。
一級建築士に加え、管理建築士の資格も取得。今は、管理建築士として建物の設計や工事監理などの仕事も増えてきました。自分が直接設計していない分、直接関わっているスタッフとのコミュニケーションを重視しながら、納得のゆく仕事を心掛けています。 先を見据えた提案ができるよう、情報収集をかかさず常に視野を広く、仕事の幅を広げていきたいと話す園部さん。 変わらないのはコンセプトに掲げる「個々と社会の調和」です。ベースになるのは、学生時代に訪れ、鮮烈な印象を与えた京都の「TIME'S」。「社会の未来を想像し、人々の暮らしや街の環境の変化を見据えたうえで、地域社会の中で「個」をどう表現するか客観的に判断。柔軟に個々と社会の調和を実現できるよう挑戦を続けたい」と話します。 誰もが予期していなかった災い新型コロナウィルス。幸いにも同社は、大きな影響は受けなかったそうです。しかし「これから建築物の在り方は大きく変わっていくと思います」と真剣な表情を見せます。法律、換気、空間構成などのハード面はもちろん、建築と人とのかかわり方というソフト面も新しい様式へと変化していきます。 新型コロナウィルスは、ライフスタイルを見直すきっかけにもなりました。事務所で深夜まで及ぶこともあったという仕事時間ですが、なるべく早く仕事を切り上げ、自宅で家族と食卓を囲むようになったそうです。早いときは、子どもたちと一緒に10時は就寝。その分、朝は3時〜4時に起きて仕事の時間に充てています。
また、図面という2次元で創造していた建築空間を、3次元で設計していく時代へと変化してきました。
今後は、本格的にBIM(ビルディング インフォメーション モデリング)を取り入れることを見据え、VRなどの仮想空間を利用しビジュアライゼーション提案を行っていきたいと考えています。視覚的なコミュニケーションツールを使い、お客様によりリアルに提案することで情報と意識の共有を図り、安心して設計を任せていただけるような設計事務所を目指します。
今後、人の動き、働き方や空間での過ごし方は大きく変わっていきます。
おのずと建築物に求められる役割も変わっていきます。「それにフレキシブルに対応できる知識を身につけ、またその必要性を提案していく大切さを感じています」と続けます。
仕事人として建築士として、また父親としてこのような変化に対応する「実体験」が、新たなアイデアを生み、広く地域に還元されていくでしょう。
園部建設設計事務所 ◆住所/伊勢崎市茂呂町2丁目780-3 ◆TEL/0270-21-3903 取材日 2020年9月
◆営業時間/9:00〜18:00
◆休日/日曜日、第2土曜日
◆業務内容/建築計画コンサルティング、土地活用計画・事前調査 ・諸手続きの支援等、建築意匠設計及び 設計監理、建物の計画・意匠設計・空間デザイン・図面作成等
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
※ご注意:本記事は上記の日付をもとに作成しています。実際にお店等に行く方におかれましては、事前に電話等で確認してからお出かけ下さい。記事と情報が異なる場合、imapは一切責任を負いませんのでご了承下さい。(記事と情報が異なる場合もありますので ご了承下さい。)