今回ご登場いただくのは、けーえむえす企画株式会社の代表取締役・水澤 和也さん。経営する6つの居酒屋は開店以来右肩上がり。取材中にスタッフが「うちの社長はかなりすごいですよ」と言いに来るほどの愛され社長です。経営は順調、スタッフにも恵まれ順風満帆に思える水澤さんですが、その裏にはいくつもの挫折がありました。挫折を成功に変えた、水澤流セオリーとは?
水澤 和也(みずさわ かずや)さん
伊勢崎市出身
伊勢崎市在住
緊急事態宣言解除からおよそ1か月後の6月30日。宮子町に「はしご屋酒場・天狗」がオープンしました。幅広い創作料理が自慢の楽しい居酒屋。コロナ禍の時代に、こんな攻めの方をするのは、この人しかいません。 水澤和也さん。10年間で伊勢崎市内に現在6つの飲食店をオープン、「コロナの前まで業績は右肩上がり」というやり手の経営者です。 意外なことに水澤さんの社会人デビューは、運送会社。メキメキと実力を発揮し、1年たたないうちに主任に抜擢されました。「振り返ってみると、意識していないうちにリーダーシップをとるたちだったんです」と照れ臭そうに笑います。次に勤めたのは塗装会社。ここでは初めての営業職だったにも関わらず、みるみるまに頭角をあらわし、トップセールスマンに躍り出ました。 「世の中、そんなに甘くありません」と水澤さん。ここで初めての挫折を味わいます。トップセールスだった水澤さんにも関わらず「(契約が)とれない」。「会社が今までに培ってきた信頼実績が自分の実力だと勘違いしていたんです」と振り返ります。そこで知ったのは、信頼と実績の大切さ。このときに「目先の利益より長期的な信用を得ることが重要」というセオリーが生まれました。これは、今でも水澤さんの中で重要な哲学となっています。 会社が思うように回らなかった水澤さんは、本業が終わったあとアルバイトを始めました。これが飲食業との出合いでした。
「会社員としてではなく、自分でできるのでは?」との自信から独立。23歳の若さで会社を設立しました。
「アルバイトで入った飲食業ですが、本業よりも順調だったんです」と水澤さん。初めて設立した塗装会社を閉め、2年後、飲食業でも独立を果たします。水澤さんのお店はすぐに人気店となり、瞬く間に店舗を4つに広げました。 ところがここでまた挫折が。2番目に出した店舗のスタッフが急に辞めてしまったのです。それも15人中14人も。 今までに接したスタッフは5000人近く。その中から生まれた経営者は50人以上。水澤さんの「人育て」のうまさを物語る数字です。 32歳になったとき、とある理由から居酒屋をオープン。これが「あたりやの眠蔵」でした。以前から居酒屋に行くのが好きで「明かりを点ければお客さまが入ると思った」という水澤さん。ところが「明かりを点けても人が入らない」…。
「現場を見ていたのは自分ですよ」店長を務めていたスタッフに言われたとき、ひと言も返せなかったそうです。
ここでまた新たなセオリーが生まれます。
「商売は人がいないと成り立たない。お客さまだけでなく、一緒に働く仲間を大切に」。
深く反省した水澤さんは、BBQをしたり、仕事が終わったら一緒に飲みに行ったりスタッフと深く関わり始めました。一対一で向き合うとわかることがたくさんあり、今まで見えなかった一人ひとりの魅力や可能性がわかるようになってきました。それからの水澤さんは、人を育てることに力を入れ始めました。「良さを引き出し、伸ばすと、その人自身が成長する」と水澤さんは話します。
またまた挫折です。しかし「起き上がれば失敗ではない」――。新たなセオリーが水澤さんを揺り動かします。お客さまと一緒にメニュー開発に取り組み「ラーメンまで食べられる居酒屋」へ。そのスタイルが受けて、客足は確実に伸びていきました。それでも「当時は、爆発的に伸びたわけではなかった」のだとか。そこで、水澤さんは誰もがビックリするような大きな勝負に出たのです。
生まれ育った町に、100人規模の巨大な居酒屋「天狗屋」をオープン。この計画には、周りの人は皆、反対でした。しかし、水澤さんは「立ち止まることが失敗。リスクはチャンス。リスクがなくなるということはチャンスもなくなるということ。安全と思ったときに始める商売は遅い」という自らのセオリーに則り、計画を実行。「満足を感動に変える店」をコンセプトにした天狗屋が開店しました。 結果、お店は大繁盛。3年目に焼肉居酒屋「天狗屋」焼肉部をオープン。そこは、どんな店が入っても早々に退散する、いわゆる魔の物件でした。しかし、水澤さんは確信していました。「ここはイケる」。「純粋に面白そうだと思いました」と水澤さん。同時に、仮に失敗したとしても笑われることはないだろうなとも思ったそうです。今までに数多のお店が撤退をしているのですから…。こちらも、結果的には大成功。もちろん、今も元気いっぱいに営業中。たくさんのファンに支えられています。 天狗屋焼肉部開店から10カ月後、オープンしたのが七輪焼酒場「天狗」。判断も行動もスピーディな水澤さん。決め手は直感だけではありません。「社員や仲間のため」という強い思い、そしてここにも水澤流の成功のセオリーがありました。沈没しかかった船に乗っているとき、沈まないようにひたすら祈るか? 万が一の可能性にかけて荒波に飛び込むか? 「自分は可能性にかける。だから迷わず仲間とともに飛び込みます。泳げませんけれど(笑)」と水澤さん。「泳げないけれど、仲間は絶対に助ける。そしてその後、新しい頑丈な船を造ればいいんです、仲間と共に」。そう続けます。 そんな水澤さんの夢は、伊勢崎に「道の駅」を作ること。もともと旅好きで、訪れた道の駅は実に300カ所以上。関東一円は全駅制覇し、完全制覇の認定証を手にしました。夢の実現に向けて、すでに行動を開始しています。「観光地よりも歓迎地」伊勢崎につくる道の駅の目標は、全国トップ10に入ること。実現する前から、水澤さんの中にはすでに青写真がしっかりと描かれています。水澤さんが常々口にし、店舗前の看板にも記されている「伊勢崎から地球を絶好調に」。絶好調となる要因が、またひとつ増えようとしています。
ラーメン酒場 天狗に続き、今年このコロナ禍真っ最中にオープンさせたのが、はしご屋酒場天狗。初めての西部進出に「競合店が多いからこそやりがいがある。面白いじゃないですか」と朗らかに笑います。今の自分の仕事は「人集め」という水澤さん。人の力の大きさを骨身に染みている水澤さんから出る、この言葉には重みがあります。
けーえむえす企画株式会社 ◆住所/伊勢崎市北千木町888−1 ◆TEL/0270-61-9183 取材日 2020年7月
◆創業/2000年
◆業務内容/飲食業(あたりやの眠蔵、和食・そば・海鮮・酒・天狗屋、焼肉居酒屋天狗屋焼肉部、七輪焼酒場天狗、ラーメン酒場 天狗、はしご屋酒場天狗)
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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