今回ご登場いただくのは、株式会社DS in Japan・代表取締役の山本雄次さん。ベトナム人のご両親のもと、ベトナム北部のハノイ市、ホーチミン市と並ぶ中央直轄市であるハイフォンに生まれました。国連安保理から「インドシナ難民」として認定を受けて来日。さまざまな仕事を経験しながら独立して今に至るまでと、山本さんが仕事をするうえで大切にしていることなどを伺いました。
山本 雄次(やまもと ゆうじ)さん
1983年、ベトナム生まれ
「25人乗りの小さな船で、10日間かけてベトナムから日本にやってきました」と話す山本さん。当時の記憶は6歳だった山本さんの中に、今も鮮明に残っています。
ベトナム戦争以降、国の配当制度に不満を持つ多くの経済難民が国外に亡命。山本さんのご両親も、同じ考えを持つ親せきと共に船に乗り、無条件で難民を受け入れる「第一収容港」である香港を目指しました。狭い船中、不安を抱えながら背中合わせで座り、10日後、ようやく到着。10隻で出国したものの、無事についたのは山本さんたちが乗ったわずか1隻だけでした。その数字が、過酷さを物語っています。香港では、それぞれ受け入れ国が割り振られます。山本さんご家族とご親戚の行き先となったのが、日本でした。
品川の難民センターに着いたご一家。間もなく、保証人であるお父様の友人を頼って伊勢崎へやってきました。山本さんは、北小学校に入学します。難しかったのが漢字。「遠足の前日に配られたプリントの内容が分からず、遠足当日、みんなが体育着で着ている中、ひとり私服で行ってしまったこともありました」と当時を思い出してにこやかな笑みを浮かべます。読書の時間に、隣の席の友人に教えてもらいながら少しずつマスターしていきました。逆に聞くことと話すことはすぐに慣れ、ご両親や親戚が行政機関に行くときは通訳を務めていました。そのことが、のちの会社設立に大きく影響していくのです。
配管工、建設関連、製造など、さまざまな業種で働いたという山本さん。誰に教えられたわけでもなく、効率よく仕事を進める方法を自ら編みだし、結果を残しました。そこで感じたのは、社員の協力。ひとりで効率を上げたとしてもそれは微々たるもの。社員全員が同じ意識を持ってのぞまなければ、結果も出づらいということを身を持って体験しました。
いろいろな仕事をする中で楽しかったのは、パチンコ業界です。お店を訪れるお客さまはいろいろな方がいらして、中には思うように玉が出ないと怒って台を叩く方もいたそうです。そのときに「やめてください」と怒り返すのは建設的ではない、と感じた山本さんは、まったく別の手に出ます。
山本さんがとったのは、ポケットマネーでコーヒーを買い、女性店員に頼んで怒っているお客さまにそのコーヒーを届けてもらう、という方法。パチンコ玉が出なくて怒る人はいても、プレゼントをもらって怒る人はいません。大抵の人が山本さんにお礼を言い、頻繁に足を運んでくれるようになったと言います。ここでは接客の楽しさと同時に、利益をあげるには仕組みがあることを学びました。実際にお店の売上も伸びていきました。
ところがこのとき、山本さんは、実は年齢を偽って働いていたのだとか。山本さんの実力を買った上司から「会社が採用する規定の年齢になったら正社員として働いてほしい」とのオファーを受けました。次の誕生日が来るのを待って、正式に社員として働き始めました。
26歳になった山本さんは、会社をやめ、通訳の会社を立ち上げます。得意分野は、弁護士通訳で、弁護士とタッグを組んで被疑者を守る案件を多く手がけました。 次第に、人と企業を「つなぐ」ことに興味を持ち始めた山本さんは、通訳の会社を弟さんに譲渡。新たな会社を立ち上げます。それが株式会社DS in Japanです。 また、山本さんらしい温かさを感じるのが、毎月1000円の「困ったときのための貯金」。これはスタッフ全員が、毎月1000円を出し合って貯めておき、30万円に達したとき、何か困っている人のために使うというシステム。とっても素敵な発想です。 仮に派遣スタッフが、契約中に仕事をやむを得ない理由で離れなければならなくなったとして、ベトナムに国内にたまたまその仕事につきたいという人材がいたら、山本さんは「明日にでも来てもらう」と言います。翌日の航空券は高く、1カ月後、3カ月後と先にすれば、航空券は安く手に入りますが、お客さまにかけるご迷惑を最小限にするためには、早く良いスタッフを迎え入れること。それがお金で解決するのなら惜しまない、と徹底しています。 夢は、部下を一人だちさせ、運営できる仕組みをつくること。
主な業務は、日本国内人材派遣、実習生受入、ベトナム語通訳、飲食店経営。中でも人材派遣は口コミで広がり、取引企業は県内外40社に上ります。派遣で働く人材はすべてベトナム人。登録制ではなく、直接雇用というから、初めて海を渡ってきた人にも安心です。また、社員を受け入れる際は、ビザの手続きや住まうための初期費用などを負担。1年以上続いた人には、アパートの更新費もすべて負担しているのだそうです。手厚い支援があることで、仕事も実習も身を入れて取り組むことができ、受け入れ先にも喜ばれると効果は絶大です。
山本さんがビジネスをする上で大切にしているのは「お金に執着しないこと」。経済学では「会社=利益を追求する法人」と言われるようですが、だとしたら山本さんのポリシーは真逆とも取れます。
「それでも…」山本さんは続けます。
「たとえば、お金で解決できることであれば、そうすればいいんです」と。
こうして、お客さまの信頼を得てきた山本さん。
今では、カラオケバー9999や、ベトナムレストラン「ボンセン」の経営にも乗り出しました。
「そうすれば、まちがもっとにぎやかになると思うんです」。
そういって再び笑顔を輝かせました。
株式会社DS in Japan 住所/伊勢崎市中央町25番地22 DSJビル1F 2019年7月
TEL/0270- 27-5166
営業時間/8:30〜17:30
休日/土、日、祝
業務内容/日本国内人材派遣、実習生受入、ベトナム語通訳、飲食店経営(カラオケバー9999、ベトナムレストランBONG SEN)
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
※ご注意:本記事は上記の日付をもとに作成しています。実際にお店等に行く方におかれましては、事前に電話等で確認してからお出かけ下さい。記事と情報が異なる場合、imapは一切責任を負いませんのでご了承下さい。(記事と情報が異なる場合もありますので ご了承下さい。)