経営者の輪Vol.226 有限会社日乃出歯科技工所の「小此木裕亮さん」
経営者の輪Vol.226 有限会社日乃出歯科技工所・取締役「小此木裕亮さん」
今回ご登場いただくのは、有限会社日乃出歯科技工所・取締役の小此木裕亮さん。今に至るまでの、ちょっと変わった経緯と、一般の人が直接見ることのない歯科技工士という仕事のやりがいなどを伺いました。
社会に出て役立つ経済を学ぶために
お父様が設立した有限会社日乃出歯科技工所で、取締役兼歯科技工士として活躍している小此木さん。歯科技工士として大先輩であるお父様は、小此木さんが小さいころ、この会社をつくりました。当時、お父様は仕事が忙しく、ほとんど家にいる時間がなく、帰宅が夜中になることも少なくありませんでした。
時折、会社を訪ねると伯父様を含む多くの社員と共に黙々と仕事に取り組むお父様の姿がありました。「職人」――当時のお父様と歯科技工士のイメージを、小此木さんはこう話します。
小此木さんご自身は、高校を卒業すると国学院大学の経済学部に進学。当時の小此木さんは「将来、なりたい職業を見つけかねていた」といいます。そこで「社会と密接に関係するお金とモノ、お金とサービスといった繋がりを学ぶ経済の知識を身につけておけば、どのような方面に進んでもその知識を生かすことができると思いました」と選択の理由を話します。こうして、小此木さんの学生生活がスタートしました。
就職初日から午後9時の洗礼!?
大学生活にも慣れた2年生のころ。小此木さんは、先輩たちが就職活動に励む姿を見て不思議な感覚にとらわれました。2年後、自分も同じような活動をして就職をする、というイメージがまるで沸いてこないのです。それは時間がたっても変わることはありませんでした。
そんなとき、脳裏をよぎったのが「職人」のように仕事に打ち込むお父様の姿。自分も同じ道を歩もう――、小此木さんは思い切って自らの進路の舵を切り直して、技工士になるために専門学校に入学しなおしました。ご両親もその夢を応援してくれました。
2年後、専門学校を卒業した小此木さんは、国家試験に合格。埼玉の会社に就職して、社会人としての一歩を踏み出しました。ところが、専門学校で学びはしたものの、その知識や技術が現場でそのまま生きるわけではありませんでした。学校で扱う歯は模範的。しかし、実際の歯はもちろん毎日使うので摩耗があったり、削れていたり、人によって違いもあります。学校で習ったことを基本に、応用力が必要なのです。
就職した会社は、研修期間を特に設けず、現場で仕事を覚えるというやり方でした。入社初日から、患者さんの入れ歯のやり直しのきく部分を担当。患者さんが実際に使うことを考えると、妥協ができず、気づけば夜の9時。
「初日からこの時間か…」小此木さんの心がわずかに曇りました。
職人気質の父と共に――。そして技工士が抱える課題
埼玉で仕事を始めて5年目。お父様からの「帰ってこい」コールに応じて、日乃出歯科技工所に入社しました。「家に戻って仕事が一層丁寧になった」と小此木さん。それは、違う職場を経験したからこそわかる、細部まで手を抜かない徹底した職人気質のお父様の存在が大きかったのかもしれません。
歯科医の指示のもと、患者さんの治療に必要な歯のかぶせ物、入れ歯、差し歯などを作ったり、修理したりする歯科技工士。口の中に入るものなので、少しの誤差も大きな違和感となってあらわれます。小此木さんが得意とするのは、入れ歯。患者さんと直接話すことはありませんが、歯科医師から寄せられる「すっと入ったよ」の言葉は大きな原動力になります。「一度上げたハードルは下げない」のが小此木さん流。「ていねいに」をモットーに仕事に励みます。
有限会社日乃出歯科技工所の強みは、迅速さ。近場のお客さまが多いとあって、軽いフットワークによる丁寧な対応が自慢です。営業活動は特にしないものの、口コミと紹介でお客さまの輪が広がっています。
高齢化が進む世の中、歯科技工士の仕事は一層大切になってきます。しかし、現状は折角国家資格を取得しても、離職率がとても高く、専門学校の同級生70人の中で今も技工士の道を歩んでいるのは、2割程度だといいます。これからは「歯科技工士の経済的、社会的な地位向上が必要」と、歯科技工士が抱える課題についても真摯な姿勢で話してくれました。
これから一層、歯科技工士にお世話になる機会が増えることを思うと、私たちも考えなければならない大事な問題です。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
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